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「バッカ言えお前! ヴァルムさん何無事じゃ無かったら、うちがやってけるわけねーだろ!」
心配して口にしたことを豪快に笑い飛ばされ、反射的に顔をしかめたリアーヌだったが、その言葉の内容を理解すると同時に「ーーそれはそう」と大きく頷いて同意を示していた。
そしてそんな会話を聞いていた馬車の中に押し込められた他の者たちは、ほんの少しだけ微笑みを浮かべると(この二人が言うならそうなんだろうな……)と、ホッと安堵の息を漏らしたのだったーー
◇
ラッフィーナート家の本邸へと馬車を走らせる道すがら、両家の位置関係的に王城の近くを通ることになるのだが、リアーヌたちを乗せた馬車が、そこを通り過ぎた瞬間、王城から何台もの馬車、そして騎士を乗せた騎馬隊が出ていくーー
それはボスハウト邸の方角へ進んでいるようでーー馬車の窓のほんの少しの隙間からその光景を見ていたリアーヌは、残っているかもしれない家人たちを思い不安に襲われるが……それが自分の不安なのか、ギフトの力なのか、リアーヌには判断がつかなかったーー
そうして辿り着いたラッフィーナート家本邸。
念の為にと、納屋に収納されてから裏口を通り、本邸へと辿り着く。
その間にもゼクスは使用人に、ボスハウト家周辺を優先的に、そこの使用人たちの保護を伝えることを指示していく。
「……間に合いますかね?」
立ち去る使用人の背中を見つめながら不安そうにたずねるリアーヌに、ゼクスは安心させるように自信満々に頷いて見せた。
「ーー大丈夫。 うちの店の者がボスハウト家の関係者を邪険に扱うわけがない。 それに、あれほど目立つ馬車や騎馬隊が街中をかけていったんだ。 何かあったことぐらいは分かってるから、余計にこっちの判断を仰ぐぐらいの対処はしてくれるよ」
「です、かね?」
「うちの店の従業員、優秀なんだよー?」
冗談めかしたゼクスの言い方に、リアーヌがかすかに微笑み返した時、これから向かおうとしていた応接室が開き、中からゼクスの祖父母や父が続々と廊下へ出てきて、サージュやリエンヌに声をかけ始めた。
「ああ! 無事だったんだね⁉︎ 城から出た騎士がボスハウト家のほうに向かったって聞いて、気が気じゃなかったよ!」
「災難だったなぁ? ……いや、お前さんなら切り抜けられるとは思ってたがーー何事にも万が一、はあるだろう?」
「さぁ中に入って休んでくれ、ほら入った入った」
そう声をかけながら肩や背中を叩きながら、応接室へと入るように促す。
「迷惑かけてすまねぇな?」
「気にすんな!」
「そうだ、もう親戚みてぇなもんだろうが」
心配して口にしたことを豪快に笑い飛ばされ、反射的に顔をしかめたリアーヌだったが、その言葉の内容を理解すると同時に「ーーそれはそう」と大きく頷いて同意を示していた。
そしてそんな会話を聞いていた馬車の中に押し込められた他の者たちは、ほんの少しだけ微笑みを浮かべると(この二人が言うならそうなんだろうな……)と、ホッと安堵の息を漏らしたのだったーー
◇
ラッフィーナート家の本邸へと馬車を走らせる道すがら、両家の位置関係的に王城の近くを通ることになるのだが、リアーヌたちを乗せた馬車が、そこを通り過ぎた瞬間、王城から何台もの馬車、そして騎士を乗せた騎馬隊が出ていくーー
それはボスハウト邸の方角へ進んでいるようでーー馬車の窓のほんの少しの隙間からその光景を見ていたリアーヌは、残っているかもしれない家人たちを思い不安に襲われるが……それが自分の不安なのか、ギフトの力なのか、リアーヌには判断がつかなかったーー
そうして辿り着いたラッフィーナート家本邸。
念の為にと、納屋に収納されてから裏口を通り、本邸へと辿り着く。
その間にもゼクスは使用人に、ボスハウト家周辺を優先的に、そこの使用人たちの保護を伝えることを指示していく。
「……間に合いますかね?」
立ち去る使用人の背中を見つめながら不安そうにたずねるリアーヌに、ゼクスは安心させるように自信満々に頷いて見せた。
「ーー大丈夫。 うちの店の者がボスハウト家の関係者を邪険に扱うわけがない。 それに、あれほど目立つ馬車や騎馬隊が街中をかけていったんだ。 何かあったことぐらいは分かってるから、余計にこっちの判断を仰ぐぐらいの対処はしてくれるよ」
「です、かね?」
「うちの店の従業員、優秀なんだよー?」
冗談めかしたゼクスの言い方に、リアーヌがかすかに微笑み返した時、これから向かおうとしていた応接室が開き、中からゼクスの祖父母や父が続々と廊下へ出てきて、サージュやリエンヌに声をかけ始めた。
「ああ! 無事だったんだね⁉︎ 城から出た騎士がボスハウト家のほうに向かったって聞いて、気が気じゃなかったよ!」
「災難だったなぁ? ……いや、お前さんなら切り抜けられるとは思ってたがーー何事にも万が一、はあるだろう?」
「さぁ中に入って休んでくれ、ほら入った入った」
そう声をかけながら肩や背中を叩きながら、応接室へと入るように促す。
「迷惑かけてすまねぇな?」
「気にすんな!」
「そうだ、もう親戚みてぇなもんだろうが」
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