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「ーーいい加減に俺の婚約者を悪者をしようとするのをやめてもらえないか? ーー実に不愉快だ。 リアーヌがお前になにをしたっていうんだ?」

 怒りをあらわにベッティを睨みつけるゼクスだったが、その隣でリアーヌはビクリと身体を震わせていた。

(ーー結構色々やってしまった自覚はあるんです……悪気があったわけではないのですが……完全に原作破壊をしてしまっている、諸悪の根源は私だったりするのです……)

 思わず肩をすくめ、気まずそうに顔を伏せるリアーヌ。
 そんな彼女に、周囲の人々は気が付かなかったが、少し離れたところでリアーヌを睨んでいたベッティにはそんな姿がハッキリと見え、瞬間的に怒りを爆殺させた。
 騎士たちにより掴まれていた腕が離れることも緩むこともなかったが、身を捩りものすごい形相でリアーヌに噛み付くように喚き始める。

「お前のせいだっ! お前が全部っ! なんでっ! なんでお前なんかがっ! 全部めちゃくちゃにしたくせにっ! ーー泥棒……本物の泥棒はお前だっ‼︎ 私は悪くない! 私は悪くないぃぃぃっ‼︎」

 その言葉は、リアーヌにとっては身に覚えのあるものばかりだったが、その周囲の人間にとっては、言いがかり以外のなにものでもなかった。

「ーーお前がなんと言おうと、悪いのはお前だ」

 ピシャリと言い放つゼクスの隣で、リアーヌは気まずげに前髪をいじりながら顔を背けた。

「ちがう……違う! そいつが悪いの! そいつが全部っ!」

 ベッティは叱られた子供のように瞳に涙を浮かべながらふるふると首を横に振る。
 しかしそんなベッティにゼクスは不愉快そうに鼻を鳴らすとさらに言葉を重ねる。

「お前がなにをどう考えているのかは知らないが、守護のギフト持ちから大切なギフトを奪ったのはお前だ。 それ以外にも、ユリアを操り王族に仇なそうとしたのはお前だろう? しかもそのユリアへの窃盗、器物破損、障害ーーさらにはそれをリアーヌ、クラリーチェ様が犯人だと誤解させようとまで画策した。 ……これが全てリアーヌのせいだとでも?」
「それは……ーーでも、でもね? 原因を作ったのはそいつで!」
「……おそらく、そこまで言うということは、君はリアーヌになにかしらの不利益を被らされたことがあるんだろう。 けれどーー……罪を犯したのが君ではないということにはならない」
「それは……」
「ーー他人をあざむだまし……君がこんなことをしていなければ、こんな結果にはなっていない」

 そこまで言ったところで、ベッティが反論しようと口を開くが、ゼクスに視線で制され、キョトキョトと目を泳がせながら口を閉ざす。
 
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