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「ふふっ だね?」

 鼻息も荒く言うリアーヌに、ゼクスが笑い声をもらした瞬間だったーー

 ベッティが急にガタリと音を立てながら立ち上がると、ワナワナと震えながらリアーヌを睨みつける。
 そんなベッティに護衛たちが素早く立ち位置を変えるが、そんなことはお構いなしにリアーヌを睨みつけたまま、クワリッと口を開いた。

「ーーどういうことよ⁉︎ なんでゼクスの夢が変わってるの⁉︎ アンタになんの権限があって、ここまで改悪するわけっ⁉︎ 私のゼクスを返してよっ‼︎」

(……え、ゼクスの夢……? ーー……友だちが欲しかったなぁ、とか……? いや、流石にもう友達の一人や二人いるだろうし……ーーゲームでそんな話出てきてたっけ……?)

 わけが分からずゼクスに視線でたずねようとするが、ゼクスは警戒を濃くした顔つきでベッティを見つめながらリアーヌの前に手を差し出し、すぐに庇えるようにしていた。

「ーー俺の夢? さっきの答えが全てだと思うけど……ーー君の意見は違うわけ?」
「あなたの夢はお父さんを超えることだったんだよ⁉︎ それをこの女が好き勝手やって変えちゃって……ーーねぇコイツになんて言われたの? 他の人に何か言われたぐらいで貴方の夢を変えないで!」
「……もしかして俺たちって初対面じゃなかったりする?」

 必死に言い募るベッティにゼクスは訝しげな顔を向けながらたずねた。

「え……」
「ーー確かに子供の頃の俺は、じーさんや親父を超えたいと思ってたけど……ーー俺もう、男爵っていう立場だからさ? 自分のことばっかり優先してられないんだよねぇ……」
「優先……? どういう?」
「いや、少ないけどコレでも領地持ちなの。 それってつまり、俺がちゃんとやんなきゃ苦しむ人や最悪死人まで出るってこと。 ……なのに『俺の夢は親父たちを超えること!』なんてガキみてぇなこと言ってらんないでしょ……ーー君がいつどこで俺の夢の話聞いたのか知らないけど、昔と今じゃ立場が違うんだ。 ーーそれに、今だってやりたくないこと無理にやってるわけじゃないし……ーーうん。 やっぱり俺の今の夢は借金返済かな?」

 そう肩をすくめたゼクスに、ベッティは呆然とした表情を浮かべながら、ドサリとソファーに座り込む。
 そして俯いたまま、なにやらブツブツと独り言を呟き始めた。

「ーーなにそれ、なんでそんなこと……だってゼクスは貴族になったって幸せになれないじゃん……私は貴方の夢を応援したくて……貴方に本当の幸せを上げたくて……ーー絶対私のほうがユリアよりそんな女よりゼクスのこと分かってるのに……」

 ベッティのそんな呟きにリアーヌの顔がヒクリと歪む。
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