上 下
973 / 1,038

972

しおりを挟む
「信じる……」
「思い込んでいる、ともいうかな? そこに真実が無くとも思い込みだけでそれはウソじゃ無くなる」
「……本当は盗まれていない……?」

 そんなリアーヌの言葉にユリアや彼女と親しい生徒たちが目を釣り上げるが、ユリアが口を開く前にゼクスが答える。

「無くなっていることは事実だろう。 だけどそれが盗まれたものなのか、本当に消えてしまったのかなんて分からないーーウソを見抜くギフトだけじゃね?」
「……ウソは分かるけど、万能じゃない……?」

 ゼクスはリアーヌの言葉に肩をすくめながら冗談めかして答えた。

「ウソが分かるだけで、充分万能だとは思うけど……全てが分かるわけじゃないって感じかな?」
「なるほどー」
 
 リアーヌが感心したように何度も頷き、そんな話を聞いていたたくさんの生徒たちも「なるほど……」「知らなかった……」などと呟きながら、納得したように頷き合っていた。

 そんな中ーー
 一人納得出来ていなかったユリアが声を荒げた。

「みんななに言ってるの⁉︎ あの女が取ったの! あの人殺しがっ! どうしてあんなやつの言うことを信じるのよっ!」

 その言葉に、今までは賛同してきた生徒たちが困惑した様子でチラチラとお互いの出方を伺い始めた。
 今まではユリアの言葉がウソでは無いのだから、ユリアが真実を語っているのだと思っていたが、今回の件でユリアが勘違いをしていれば、その相手にはなんの罪も無いことが分かってしまった。
 そのため、今までのように一緒になってリアーヌを責めることが恐ろしくなってしまったのだ。

 黙ってしまった周囲に驚愕の表情を浮かべるユリアに、ゼクスは不愉快そうに口を開いた。

「ーー君の言うことよりリアーヌの言葉を信じる理由なんていくらだってあるけどーーリアーヌのギフトがコピーであるということは学院が、そして国が認めている。 それに加えコピーというギフトには、他人からギフトを奪える力は無いという証明もされている。 ーーつまり、君が誰かにギフトをというなら、リアーヌには絶対に出来ないんだ。 彼女のギフトはあくまでも『コピー』だからね?」
「そんなの! その女がウソついてるだけよ!」
「それはもう通用しない。 ここに集まったウソを見抜くギフト持ちが、リアーヌのギフトは『コピー』であり、そのことに間違いはないと理解したのだから」 

 その言葉にユリアは周りを見回し、生徒たちと目を合わせようとするが、大勢の生徒たちがその視線から目を逸らした。

「なんで……? だってこの人が盗んだのに……」

 不安そうに声を振るわせるユリアに、レジアンナやビアンカ、クラリーチェたちが一歩前に進み出ながら口を開いた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

処理中です...