上 下
971 / 1,038

970

しおりを挟む
 ーーしかしその言葉により、フィリップたちは、決して少なくは無い動揺を覚えることになったのだった。

「レオン! 私どうしたらいいのか……気がついたら無くなってたのよ⁉︎ きっと誰かがーーその女が盗んだに違いないの! ーーねぇ、貴方の力でどうにか、そいつからギフトを取り返してもらえない⁉︎」
「ーー私にそんな力など……」
「そんな! 私とっても困ってるの! 絶対に貴方の役に立つと違うからーー」

 そこまで言ったユリアに、その身体を押し留めていますエーゴンが低い声で語りかけた。

「ーーなんの話をしているか知らないが……ーー何かを暴露するつもりなら容赦はしない……その細首の一本程度、瞬きする間もなくへし折ってやろう……」

 その言葉に顔色を悪くしながら後ずさるユリア。
 そんなユリアを抱き止めながらベッティは、キッとキツい視線をエーゴンに向けた。
 その言葉から、ユリアがレオンの正体を知っている可能性に気がついたフィリップは、顔つきを固くしながらユリアに再度二、三の質問を重ねて投げかけた。

「ーーでは本当に『守護』のギフトが盗まれてしまった、と?」
「ええ、そうよ。 その女が盗んだの!」

 ユリアはリアーヌをジロリと睨みつけながら答えるが、その視線から守るようにゼクスがその前に立ちはだかる。
 そのことでユリアの顔がさらに怒りで歪むが、その姿は庇われたリアーヌからは見ることが出来なかった。

「……君は確かに『守護』のギフトを持っていたんだよね?」

 イザークの反応を確認しながらフィリップは内心の動揺を隠しながら質問を続ける。

「当たり前じゃない! 今更私を疑うの⁉︎」
「いやいや、確認は大切だろう? ーー誰かに預けたわけではなく、誰かに譲ったわけでもなく、誰かに盗まれてしまったんだね?」
「大切なギフトを誰かに預けたり譲ったりするわけないでしょ⁉︎ そいつが盗んだの! さっさと捕まえて私に返してよっ!」

 ユリアの言葉にフィリップたちは忙しなく視線を交わし合い、ユリアを追ってきた取り巻きたちや契約していたであろう生徒たちは、ユリアの言葉を信じ、リアーヌに険しい視線を向けていた。

 ーーフィリップたちの誤算は、想像以上に野次馬をする生徒たちが多く、すでに人々に取り囲まれてしまい、そう簡単には移動出来なくなってしまったことーー
 そして……
 ウソを見抜くことができるイザークが、ユリアの「ギフトが無くなった」「リアーヌが盗んだ」という言葉に嘘偽りをなにひとつ感じなかったことだろうかーー

「ーー事実、だと?」

 困惑したフィリップの問いかけにイザークはすぐさま首を横に振る。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

もしもし、王子様が困ってますけど?〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
前世コミュ障で話し下手な私はゲームの世界に転生できた。しかし、ヒロインにしてほしいと神様に祈ったのに、なんとモブにすらなれなかった。こうなったら仕方がない。せめてゲームの世界が見れるように一生懸命勉強して私は最難関の王立学園に入学した。ヒロインの聖女と王太子、多くのイケメンが出てくるけれど、所詮モブにもなれない私はお呼びではない。コミュ障は相変わらずだし、でも、折角神様がくれたチャンスだ。今世は絶対に恋に生きるのだ。でも色々やろうとするんだけれど、全てから回り、全然うまくいかない。挙句の果てに私が悪役令嬢だと判ってしまった。 でも、聖女は虐めていないわよ。えええ?、反逆者に私の命が狙われるている?ちょっと、それは断罪されてた後じゃないの? そこに剣構えた人が待ち構えているんだけど・・・・まだ死にたくないわよ・・・・。 果たして主人公は生き残れるのか? 恋はかなえられるのか? ハッピーエンド目指して頑張ります。 小説家になろう、カクヨムでも掲載中です。

奥様はエリート文官

神田柊子
恋愛
【2024/6/19:完結しました】【2024/11/21:おまけSS追加中】 王太子の筆頭補佐官を務めていたアニエスは、待望の第一子を妊娠中の王太子妃の不安解消のために退官させられ、辺境伯との婚姻の王命を受ける。 辺境伯領では自由に領地経営ができるのではと考えたアニエスは、辺境伯に嫁ぐことにした。 初対面で迎えた結婚式、そして初夜。先に寝ている辺境伯フィリップを見て、アニエスは「これは『君を愛することはない』なのかしら?」と人気の恋愛小説を思い出す。 さらに、辺境伯領には問題も多く・・・。 見た目は可憐なバリキャリ奥様と、片思いをこじらせてきた騎士の旦那様。王命で結婚した夫婦の話。 ----- 西洋風異世界。転移・転生なし。 三人称。視点は予告なく変わります。 ----- ※R15は念のためです。 ※小説家になろう様にも掲載中。 【2024/6/10:HOTランキング女性向け1位にランクインしました!ありがとうございます】

処理中です...