成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「……私が、かい?」
「こんなかで一番偉いのはアンタだろ? だったらこんなかで一番可能性があるのはアンタだ」
「……他の家のことに口を挟むのはーー」
「言いたくねぇのか?」

 キョトンとした顔つきで不思議そうにたずねるザームにフィリップは顔をひきつらせながら答えた。

「そういうわけでは……」

(……ーーあれ? なんだろう……? 貴族っぽくは無いけど……ザームってば結構堂々と交渉してるじゃない⁉︎ え、すご。 私なんかより全然立派じゃん!)

 ーー当然、ザームの言葉づかいや態度は、通常であるならば非常識と称されるものではあったのだが……
 今回に限りそれを指摘することは、フィリップにだけは絶対に出来なかった。
 ザームに『気楽に話せ』と言ったのは他でも無いフィリップだったのだからーー

「なぁ、言ってみるだけいいだろ? もし効果なくても文句言ったりしねぇからさ」
「その……」
「……それともアンタもゼクスさんみてぇにオリバーさんがこえーのか?」

 その言葉にフィリップがヒクリと盛大に引きつり、そしてそんなフィリップをよそに、リアーヌの隣ではゼクスが小声で「別に怖いわけじゃ……」と言い訳めいたことをモゴモゴと口にしていた。

 その後、周りの視線やゼクスへの対抗意識も相まって、フィリップはオリバーへ一言添えることを約束し、リアーヌたちはサロンを出ることになったのだった。

 ーーリアーヌだけは、しきりに後ろを振り返りながらカチヤたちに「私は一応反対しましたよね?」「なのに、みんなが『出るか……?』みたいな空気にしたんですよね⁇」としきりに訴えていて、カチヤたちもそれに頷きながら「変な感覚はございませんね?」「お嬢様が嫌な時はすぐにおっしゃって下さいね?」としきりに確認していたのだったーー

 ◇

 リアーヌたちがサロン棟を出てすぐのことだった。
 どこからともなくざわめきが聞こえてきて、視線を上げた先にはすでにユリアたちがこちらに向かい走って来る姿が見えた。

「まぁまぁ……あんなにスカートを翻して……とんだ淑女もいたものね……?」

 レジアンナの言葉にクラリーチェとビアンカが手で口元を隠しながら笑うのを見て、リアーヌもそっとその仕草を真似る。
 心の中で(あれはダメなんだ……)と学習しながら。

 ユリアは勢いよく走り寄り、そのままの勢いでレオンに突撃する。
 それはレオンに辿り着く前にレオンの学友兼護衛のエーゴンによって阻まれるが、ユリアはなんとかレオンに近づこうとしながらも、涙を浮かべながら自身に降りかかった不幸を訴え始めたーー
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