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 その答えを聞いたリアーヌは、その意味が分からないままに、いくつもの目と耳を持っているフィリップを想像してしまい、顔を引きつらせながらそっと視線を伏せた。

「ーーや、私は二個ずつで……」
「ーーそのままの意味なわけがないでしょう?」

 その表情から正確に事態を察したビアンカがため息混じりに声をかける。
 そして肩をすくめたまま説明の言葉を続けた。

「自分が知りたいと思った情報を代わりに集めてくれる方々を多く雇っていらっしゃるという意味よ。 ーー右腕、とかはよく言うでしょう?」
「ーーそれの目と耳をバージョン?」
「自分の代わりに見聞きしてくれるのだから、目と耳と称してもおかしくは無いでしょう?」
「確かに……ーーけど、めっちゃお金かかりそうだね?」
「……そうね? でもなるべくかけるようになさい? 今回のように事前に手を打てるんだから」
「ーーめっちゃ大切じゃん⁉︎」

 目を大きく見開いて全身で『初めて気がついた!』と主張するリアーヌに、参加者たちからクスクスと笑い声がもれ、少し場が和んだところで、レジアンナが会話を戻す。

「ーーけれどビアンカのが推測が正しかった場合……いくら守護持ちとはいえ、無事でいられるかしら……?」
「……その場合はフォルステル家にすら伝えていないということになりますからね?」

 レジアンナの言葉に答えたのはレオンで、その言葉にクラリーチェが口を開いた。

「ーーつまり後ろの方にも知らせていない……?」
「ーーと、考えるが……ーーまさかその方の指示の可能性が……?」

 レオンたちの会話にフィリップが眉をひそめながら参加する。

「だとしたらリアーヌ嬢はここには辿り着けていないはずなんだ。 ーー我々を一網打尽にする策ーーとも考えられなくはないが……ーーいや無いな。 リアーヌ嬢の身柄をこちらに渡すメリットが多過ぎる」
「リアーヌの身の安全が保証されているなら、子爵様だって心置きなく敵対なさるでしょうしねぇ……?」

 レジアンナの言葉にフィリップは大きく頷きながら「やはりこちらにとってのメリットだらけになってしまうな……」と呟いた。

「つまり……現状はフォルステル家に味方する者たちばかりが不満を募らせているだけーーということでしょうか……?」

 フィリップたちの反応を伺いながらパトリックが言った。
 その言葉にフィリップたちはビミョな顔つきで曖昧に頷きあう。
 その言葉の通りだとは思っているものの、それと同時に、そんなわけが無いだろう……という漠然とした疑問も感じていたのだ。
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