上 下
950 / 1,038

949

しおりを挟む

「ーーえ、本当に? ……ってか、本当にギフトなんて盗めたんですね……?」

 目を丸くして呆然とたずねるリアーヌに、困ったような笑顔を向けるクラリーチェたち。
 リアーヌが視線をビアンカに向けて説明を求めると、ビアンカは肩をすくめながらシレッと答えた。

「そんなわけないでしょ……ーーいえ、ギフトを他人から貰い受けるギフトは存在しているらしいけど……ーー今回は違うわよ。 大方、そう言って騒いでまた貴女に汚名を着せようとでもしてるんでしょ」
「……え、でもそれってーーウソにならない?」

 リアーヌの質問に答えたのは向かい側に座るレジアンナだった。
 勢いよくリアーヌ方に身体を乗り出して、眉間にシワを寄せながら答える。

「明らかな濡れ衣よ! こんな話普通だったらすぐさま国が乗り出す事案でしてよっ!」
「……つまり国は乗り出してはいない……?」
「ーーあの女は今でも教室で涙ながらに「盗まれた」「どうして……?」と大勢の生徒たちに訴えてることでしょうよ」

(……今は授業中では……? え、ユリアにはそこまでの力がある……?)

「先生方も苦労なさっておいででしょうね……?」

 リアーヌの疑問に答えるようにクラリーチェが困ったように続ける。

「あの女の後ろに居る方に気をつかっているんでしょうけど……ーーそれでも国から誰も派遣されてこないなんてありえないしーーつまりは誰かが騎士を止めているわけでしょ? ……後ろの方だって、これが茶番だと分かってるってことでしょーーああもうっ! どうして神様はあんな女に守護だなんてギフトをお授けになったのよ⁉︎」

 勢いのままにバンッとテーブルを叩くレジアンナ。
 その両方をそっと抱きしめるように掴んだフィリップは、そのままそっとイスに深く腰掛けるよう誘導する。
 
(……つまり、ユリアは私がギフト泥棒だって言い張って、私の外聞に傷をつけたくて「盗まれた!」とか言い出しちゃったってこと……? ……え? でもさ……⁇)

「……私が犯人だった場合、いつ盗んだことになるの? 今朝? この学院に忍び込んで⁇ それって警備部とも喧嘩するハメにならない……?」

 リアーヌの言葉に、その部屋に集まっていた者たちは、肩をすくめたり大きくため息をついたり、思い思いの方法で呆れていることを表現してみせる。
 そしてビアンカが顔をしかめながら意見を述べる。

「あの子と警備部は前回の殺人未遂件で完全に敵対してるわよ。 警備部が上げた“事件性なし”と結論付けた報告書も、どこぞの後ろの方が握りつぶしたとウワサですし?」
「ええ……? 私の無実……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう

さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」 殿下にそう告げられる 「応援いたします」 だって真実の愛ですのよ? 見つける方が奇跡です! 婚約破棄の書類ご用意いたします。 わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。 さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます! なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか… 私の真実の愛とは誠の愛であったのか… 気の迷いであったのでは… 葛藤するが、すでに時遅し…

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

皇妃になりたくてなったわけじゃないんですが

榎夜
恋愛
無理やり隣国の皇帝と婚約させられ結婚しました。 でも皇帝は私を放置して好きなことをしているので、私も同じことをしていいですよね?

処理中です...