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◆ ◆ ◆

 自室に戻るや否や持ち物を乱暴にベッドに投げつける。
 ここの壁は思っている以上に薄いので声が出ないよう、グッと唇を噛み締めながら憤りをぶつけて行く。

(どうして⁉︎ なんでなにもかもうまくいかないの⁉︎ せっかくこの世界に来られたのに! ちゃんと話せて手を伸ばせば触れられるのにっ!)

 やがて投げるものがなくなると、ドサリと音を立てながらベットに倒れ込んでグッと手を握りしめ怒りを堪える。

 (ああもうっ! 大体あいつはなんなの⁉︎ なんで存在もしない女がキャラたちの近くで『当然ですけどなにか?』みたいな顔してるわけ⁉︎ ……こんなの知らないーーこんなの私の知ってる話じゃないっ‼︎)

 ダンッダンッと想いのままにベッドに拳をたたきつける。
 その振動でいくつかの荷物がベッドから落ちて、床に散らばって行くが、そんなことも気にならないほどの怒りに支配されていた。

(ーー正さなきゃ……どうにかして元に戻さなきゃ……ーーだってあの人には私の助けが必要なんだから……!)

 そこまで考えると、大きく肩で息をしながらのそりと起き上がる。
 そしてふと視線を向けたドレッサーに映る自分の姿にギクリと身体をこわばらせた。
 髪はボサボサ、顔は強張っていてとてもではないが、誰かに見せられるような状態では無かった。
 そのことで少しだけ冷静になると、手櫛で髪を撫で付けながら鏡から視線を逸らす。

(ーー私なら貴方を守れる。 私なら貴方の望みを叶えられる……! ーーだから間違いは正さなきゃ……貴族だか王族だか知らないけど、邪魔なのはいつもあの女……ーーリアーヌとかいう不純物……ーー人殺しが無理なんだったら、絶対に許されないような犯罪を犯したことにするのはどう? ーーだって貴族って大勢の前で犯罪者だってレッテル貼られたら人生終わりなんでしょ? ーー大丈夫。 一緒に騒いでくれる子たちはいくらだっているし……ーー『そうすればあの人と幸せになれるのよ』って言っとけば、アイツは大人しく私のいうことを聞く……ーーそれにそもそもなーんにも考えてない空っぽ女だし……)

 フン……と鼻で笑いながら窓の外を見つめる。
 そして大きく息をつきながら決意する。

(やるなら早い方がいい。 アイツがめちゃくちゃにしたせいでシナリオの進み具合がどうなってるのか、好感度イベントがいつ発生するのか全然分かんない……! これで第一王子が王太子なんかになったら笑えないし……そうなる前にーーあの女には……ううん、邪魔者には全員消えてもらわなきゃーー)
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