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「せっかくだから一緒に教室戻ろ? ちょっと待ってて?」

 そう言ったゼクスは後ろを振り返る。
 それに釣られるようにリアーヌたちもそちらに目を向けると、少し離れたところからこちらを見ているベッティ・レーレンの姿があった。

「……まさかあの方ーーこの期に及んでまだラッフィナート家の庇護を求めてらっしゃいますの……?」
「ーーまさか……?」

(ーーえ、だってあの子、もう敵意隠す気ゼロですよ⁉︎ 毎日のように泥棒だの権力の濫用だの言ってきてますよ⁉︎ ーー私これでも肩書だけは未来のラッフィナート商会の若奥様ですよ⁉︎)

「ーー類は友を呼ぶと言いますけれど、恥知らずは恥知らずを呼ぶものなのかしら? それとも出会ってしまったからこそ、ああも増長してしまったのかしら……?」
「あー……?」

(いや……あの子は元々は良い子なはずなんだけど……ーー違うのかなぁ? 元からあんな性格の子……? ーーえ、元から主人公に嫌がらせして、他の人が犯人かのように見せかけて、その上犯人にしたてあげようとした奴の婚約者に守ってください! って言うような子だったってこと……? メンタルがヤバすぎる……ーーおいココ恋愛ゲームの世界だそ⁉︎ ゲームと同じじゃないのは分かってるけど、もうちょっと恋愛に重きを置いてくれても良いんじゃないの⁉︎ 万年恋愛脳のレジアンナを見習えと……! ーーいや、全員のレジアンナ化は絶対阻止するけど……)

 そんなことをうだうだと考えながらゼクスの背中を眺めていたリアーヌ。
 不意にゼクスが振り返り、フリフリと手を振って見せた。
 なんの合図なんだろう……? と考えながらも、笑顔を貼り付け同じように手を振りかえすリアーヌに、ゼクスは満足そうな表情を浮かべると、一言二言ベッティと言葉を交わした後、強引に話を切り上げるかのような動作でこちらに向かって走って来た。

(ーーどうして私を睨むんだ……)

 走り去るゼクスに手を伸ばしたベッティは、すぐさまゼクスが走り去る先ーーつまりリアーヌの方に視線を向け、ギッとその目つきを鋭くさせていた。

「……ご自分がリアーヌになにをしたのか覚えてらっしゃらないのかしら?」

 そんなビアンカの呟きに、なんと返すべきか少し悩んだリアーヌだったが、すぐにゼクスがやって来て、そのまま歩くように促されたので、そのままうやむやにしてゼクスに従い歩き始めた。

「ーーそれで? 事情は詳しく聞かせて頂けるのかしら?」
「もちろんですとも」

 ビアンカの問いかけにゼクスは愛想良く答え、ニッコリと笑いかけるのだったーー
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