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ーー誰一人として口を開く者はおらず、一斉に視線を交わし合い、ユリアの真意を測っていた。
(……本気? ーーつーか……その理論でいくと、やっぱり私、圧力とかであんたをどうこうできる立場の人間じゃないことになりますけれども……?)
「ーーほら! 私にだってあるんでしょう、その継承権とやらが! 騙されないんだから!」
カチヤたちの沈黙をどう捉えたのか、ユリアは勝ち誇ったように胸を張りながら言い放つ。
そんなユリアに声をかけたのは、クスクスと肩を揺らすカチヤたちだったーー
「あらあら……貴女も王位継承権もお持ちでしの?」
「まぁ、それは素晴らしいことですわ? 一体お父上はどなた様なのかしら? お早くご認知を頂き、正しいご教育を受けられるようにすべきですわ?」
完全にバカにした様子のカチヤたちの言葉に、警備部の人間たちも苦笑を浮かべながら肩をすくめ合う。
ーー当然のことながらフオルステル家は王家に連なる家ではなく、ましてや王族が降嫁したという話も無い。
可能性として残るのは、ユリアが現在の王族、どなたかのご落胤の場合だがーーこれは万が一にも虚偽であった場合、悪質と認められれば極刑にも問われるほどの重罪であった。
「なによバカにして! 先にデタラメを言ったのはそっちじゃ無い!」
みんなに笑われ、頬を赤くしながら抗議するユリア。
しかしそんなユリアにカチヤは大きくため息をつき、警備部の者たちに視線を向けた。
「……私、なにかデタラメを言いましたかしら?」
「ーーいや。 ボスハウト家が王家に連なる家であることも、その家の姫君であらせられるリアーヌ様に王位継承権があることも事実だ」
その言葉に目を丸めるユリア。
しかしユリアがなにか言葉を発する前に別の騎士が言葉を付け足した。
「ーー私は侯爵家の人間ですが、王位継承権は持っていませんよ。 ーー私は正真正銘、父と母の息子ですので?」
その言葉でユリアは自分の勘違いと、カチヤたちに出生のことで揶揄されたのだと気がつき、顔を真っ赤にしながらギロリと二人を睨みつけた。
「ーーフオルステル家はどんな教育を受けさせたんだ……」
騎士の一人が呟いたのだったがーーその言葉にはリアーヌでもすぐに理解できてしまうほどの侮蔑の感情が乗せられていたーー
(ーー教育、いまだに受けてないらしいですよ……?)
リアーヌは視線を伏せながら、そっと心の中で返していた。
ユリアが静かになったことで、あたりに気まずい空気が流れ始めた頃、警備部の騎士たちは再び、リアーヌを先導しながら歩き始めようとするが、そこに再び言葉をぶつけたのはユリアだった。
(……本気? ーーつーか……その理論でいくと、やっぱり私、圧力とかであんたをどうこうできる立場の人間じゃないことになりますけれども……?)
「ーーほら! 私にだってあるんでしょう、その継承権とやらが! 騙されないんだから!」
カチヤたちの沈黙をどう捉えたのか、ユリアは勝ち誇ったように胸を張りながら言い放つ。
そんなユリアに声をかけたのは、クスクスと肩を揺らすカチヤたちだったーー
「あらあら……貴女も王位継承権もお持ちでしの?」
「まぁ、それは素晴らしいことですわ? 一体お父上はどなた様なのかしら? お早くご認知を頂き、正しいご教育を受けられるようにすべきですわ?」
完全にバカにした様子のカチヤたちの言葉に、警備部の人間たちも苦笑を浮かべながら肩をすくめ合う。
ーー当然のことながらフオルステル家は王家に連なる家ではなく、ましてや王族が降嫁したという話も無い。
可能性として残るのは、ユリアが現在の王族、どなたかのご落胤の場合だがーーこれは万が一にも虚偽であった場合、悪質と認められれば極刑にも問われるほどの重罪であった。
「なによバカにして! 先にデタラメを言ったのはそっちじゃ無い!」
みんなに笑われ、頬を赤くしながら抗議するユリア。
しかしそんなユリアにカチヤは大きくため息をつき、警備部の者たちに視線を向けた。
「……私、なにかデタラメを言いましたかしら?」
「ーーいや。 ボスハウト家が王家に連なる家であることも、その家の姫君であらせられるリアーヌ様に王位継承権があることも事実だ」
その言葉に目を丸めるユリア。
しかしユリアがなにか言葉を発する前に別の騎士が言葉を付け足した。
「ーー私は侯爵家の人間ですが、王位継承権は持っていませんよ。 ーー私は正真正銘、父と母の息子ですので?」
その言葉でユリアは自分の勘違いと、カチヤたちに出生のことで揶揄されたのだと気がつき、顔を真っ赤にしながらギロリと二人を睨みつけた。
「ーーフオルステル家はどんな教育を受けさせたんだ……」
騎士の一人が呟いたのだったがーーその言葉にはリアーヌでもすぐに理解できてしまうほどの侮蔑の感情が乗せられていたーー
(ーー教育、いまだに受けてないらしいですよ……?)
リアーヌは視線を伏せながら、そっと心の中で返していた。
ユリアが静かになったことで、あたりに気まずい空気が流れ始めた頃、警備部の騎士たちは再び、リアーヌを先導しながら歩き始めようとするが、そこに再び言葉をぶつけたのはユリアだった。
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