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 ザームの言葉に視線を揺らしながらも素直に頷いているアロイスを見つめながら、リアーヌも心の中で大いに同意していた。

(ーーそれはそう。 敵に容赦する先生とか解釈の不一致が凄まじい……ーー容赦なく叩き潰してこその先生なのよ!)

「……って言われてるけど?」

 ゼクスに話しかけられ、リアーヌは視線を揺らしながらモゴモゴと答える。

「か、鑑賞してる分には無害ですし……それに腹黒なのは理解してますし……」

 その弱々しい答えにいち早く反応したのはザームだった。

「はぁ⁉︎ 分かった上で言ってんのかよ? ……趣味疑うわー」
「世の中にはギャップ萌えって嗜好がちゃんと存在してるんですぅー!」
「……ギャップ、もえ?」

 言い返したリアーヌの言葉を拾ったビアンカが、不思議そうに首を傾げる。
 その態度にリアーヌは(言わなきゃ良かったかも……)と少し後悔しながらも促されるがままに説明を始めた。

「だから……例えばーー強そうでちょっと怖そうな男の人が、ものすごい笑顔で甘いもの食べてたり、結構立場のある人ーー陛下とか学院長とかが、子猫とかに向かって赤ちゃん言葉使ってたら、こう……「そんな一面も⁉︎」ってなるでしょ?」
「まさにギャップね……?」
「それを知った時、こう……別に怖くないんだぁーとか、可愛いところもあるんだぁーってなるのが……萌え?」

(……ちょっと違うけどーーまぁ良いだろ)

「ーーその理屈でいうと……貴女はミリャエリス先生に対して、どんなギャップ萌えを感じているのよ?」
「え? あんな天使みたいな見た目のくせに、天然なんだか愉快犯なんだか判断がしにくいラインの言動をして周りをからかって楽しんでる腹黒なんだよ? ものすごいギャップじゃない?」

 リアーヌが答えた瞬間、ザームの口から「うわぁ……」という声が漏れた以外は、みんなが無言でリアーヌから視線を逸らしていた。
 ーー部屋の隅に控えていた、護衛であるはずのオリバーでさえも、そっと視線を外していたのだった。

「ーーえ? だって……凄いギャップじゃん!」
「……そう、だね? ーーちょっと凄すぎるかな……?」
「ーーいつも以上に貴女の言葉が理解できないけれど……ーーそれは悪趣味と言われても否定できなくてよ……?」
「そんなバカな⁉︎ あの、虫も殺せないような笑顔で嫌いなヤツを奈落の底に突き落とす感じ……良くない⁉︎」

 リアーヌはビアンカやザームに同意を求めるように視線を向けるが、二人は肩をすくめながら冷ややかな視線をリアーヌに返しながら答えた。

「ーー良く、は無いわ?」
「いいわけねーだろ……」
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