成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「あー……ね?」

(そうだった……他の家は全部公爵家でーー私が『言うて、ちょっと血が繋がってるだけだしー?』とかいうと『ふーん? じゃあうちは⁇』って公爵家から言われたることになるのか……ーーそうだよ、この国の王家に連なる家ってうち以外みんな公爵家だったわ……)

「気をつけてちょうだい。 とばっちりはごめんよ」
「うぃ……」

 すっかりお馴染みとなってしまった呆れ顔のビアンカに、これまたお馴染みになってしまった表情で謝罪するリアーヌ。
 二人はいつものようなやり取りをしながら廊下を歩いていくのだったーー



「ーー姉ちゃん、こんなかすり傷なのに一回じゃ治せねーのかよ……?」

 ボスハウト家、控え室の中。
 最近覚えた治癒ギフトの練習に付き合っているザームが、呆れながら声を上げた。

「うっせ! ちゃんと最後には完璧に治るんだから文句言わないで!」

 そう言いながらザームの手のひらに出来た擦り傷に治癒ギフトをかけ終わったリアーヌは、次に回復ギフトをかけ始める。

「ーーこっちは断然早くなったんだからプラマイゼロみたいなもんよ!」
「いや、マイナスでしかねぇが……?」
「ゼロ同然なんですぅー! もう終わったんでさっさと退いてくださいー」

 小さな子供が喧嘩をしているかのようなやり取りに、苦笑いを浮かべながらも、エドガーは次の練習台になるべくリアーヌの前に座る。

「本当に力は多いんですよね……」

 少しの違和感を感じる程度の肩の痛みを数の暴力で治療したリアーヌに対し、エドガーは感嘆の声をあげるが、リアーヌはピクリと眉を引き上げていた。

(力ってなに? ギフトなんて持ってるか持ってないか、力が多いか少ないかくらいしかないでしょ? ……もう少しぐらい感謝してくれないと、今からやる回復で手ぇ抜いちゃうんだからな……?)

「救護室の先生なんか、もっと大人数をたった一回で治してたぞ?」
「本職と比べないでよ……ーー待って? 救護室の先生って? あんたいつ怪我したの⁇」
「あー? ケガっつーかトーナメント戦の時は次の試合前にまとめて回復かけてくれんだよ。 対戦相手によっちゃ、不公平すぎるんだと」
「なるほどねー……ーーあれ? 救護教諭で回復持ちって……?」
「なんかダブルの先生いるだろ? どっちもできる人。 一番のキンキラキン」
「ミヒャエリス先生⁉︎」
「……なんかそんな名前のヤツ」
「えー……良いなぁ……」

 リアーヌは一番の推しキャラに回復や治癒をかけてもらえるザームを羨ましそうに唇を尖らせた。

「ーーえ、ってことはだよ? 私が騎士科の生徒になったらトーナメントのたびにミヒャエリス先生から回復をかけていただける……⁉︎」
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