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「ーーあのっ!」

 そんな楽しげに笑う二人の背後から、一人の女生徒が声をかけてきた。
 その声に振り向きながら、ゼクスは困惑の声を上げた。

「君は……」

(……お助けキャラのベッティ・レーレンーーユリアは……いなそうだけど……ーーなんでここに?)

 リアーヌとゼクスが視線を交わし合って、互いに首を傾げあっていると、ベッティは勢いよく頭を下げて挨拶を始めた。

「お久しぶりですラッフィナート男爵様!」
「……お久しぶりですね、レーレン殿」

 その言葉にホッとしたように顔を上げると、モジモジと胸元で手を動かしながら嬉しそうにはにかむベッティ。

(ーー私には一切の挨拶どころか、目すら合わなかったけど……ーー別に悲しくなんて無いもん……ーー私、この子のこと犯人だって告発しちゃったし、この子はこの子で私がやったって言いふらしてるし……ーー今の私はこの子とそんな関係じゃ無いって分かってるもん……!)

「ーー花園はいかがですか? ……お一人で散策されるのも気楽さがあると思いますが、ご学友とご一緒ならば、もっと素敵な思い出が作れると思いますよ? ねぇリアーヌ?」

 ゼクスは挨拶すらスルーされたリアーヌへのフォローと、ベッティにリアーヌに対しての礼を欠いていると言外に伝えるために、わざわざリアーヌへと話を振ったのだが、振られたリアーヌはかすかに身体を震わせ、驚きながら表情を取り繕っていた。

(私はこのままゼクスの付属品として振る舞うのかと思っていたのに⁉︎ ーー大丈夫、私なら出来る! 口角よぅし! 背筋よぅし! 胸は張って肩は下げる! 返事のシミュレーション! ……もう一度口角確認! ーーきっと完璧!)

「……そうですわね? ゼクス様のご厚意のおかげで、とても素敵なエリアも出来ましたの! 紅葉エリアにはもう行かれましたか? まだならぜひご覧になってみて下さい」

(センスがないから歯に注意! 絶対見せない!)

 リアーヌがほぼ完璧な所作で返事をし、ベッティに話を返したのだが、ベッティはその言葉に視線をうろつかせながら「はぁ……」と気の抜けたような返事を返しただけだった。
 その返事にピクリと眉を跳ね上げたゼクスは、再びリアーヌに話しかける。
 ーーリアーヌはベッティに話を返しているので、次にゼクスが喋り始めるのはあまり褒められた行為ではないのだが、マナー違反を指摘するのであれば、どうひいき目に見てもベッティのほうが無礼だったので、誰に無礼を指摘されることも無いだろう。

「土地が変わると色々問題があるんじゃ無いかと不安だったけど、さすがはボスハウト家。 腕のいい庭師を抱えてるね」
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