成り上がり令嬢暴走日記！

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「ーーそろそろプチシューに新しい味が増えてもいいかもね……？」
「あー……そう、ですね？　ーーいや、プチシューはチョコか飴がかかってるもんだってザームが言い張るので、ちょっと……ーー飴がけは量産に向いてないですし……」

　リアーヌはそう主張していた時のザームの不機嫌そうな顔を思い出しながら肩をすくめる。
　それに苦笑をこぼしたゼクスが口を開いた瞬間ーー

「ねぇちゃんと聞いて！　その人とじゃダメなんだよ⁉︎　レオンは幸せになりたくないの⁉︎」

という、ユリアの大声がその辺り一体にこだました。

「……いや、相手は公爵令嬢だわ」
「リアーヌ聞こえないからね？　俺たちは何も聞いてないよ？」

　思わずボソリと呟いてしまったリアーヌを小声で嗜めるゼクス。
　その言葉にぐぬぅ……と唸り声を上げたリアーヌは小さく息を吐き出しながら空を見上げた。

「ーーいいお天気ですねー？」
「……だよねー？」

　二人がもう何度目になるか分からない天気の話を繰り返し始めた頃、ユリアのものではない大声が辺りに響き渡った。

「ーー私わたくしが、幸せにするのですっ！」

　初めて聞くようなクラリーチェの大きな声に、リアーヌはしっかりとそちらへ顔を向けてしまうが、ゼクスも驚いているのか嗜める声は聞こえてこなかった。

「私が！　レオン様をっ！　幸せにするのですっ貴女なんかじゃないっ‼︎」

　感情が昂りすぎているのか、これまで我慢して来た感情が爆発しているのか、クラリーチェはボロボロと涙を流しながら、それを隠そうともせずユリアを睨みつけていた。

（ーーこの反応は普通だと思うんだけど……ご令嬢的にはどうなんだろう……ーーこんな人前で喚いてたとか……クラリーチェ様が悪く言われちゃうんじゃ……）

　リアーヌが思わず椅子から腰を浮かしかけたところで、ゼクスが慌ててその腕を掴んだ。

「ーーダメだ。　俺たちは手を出せない」
「でも……」

　心配そうな顔をしているリアーヌにゼクスは肩をすくめながら、ことも無げに言い放つ。

「……隣に立ってるの、誰だか分かってる？」
「え……？」

　その言葉に、リアーヌはようやくクラリーチェのすぐ側にはその背中を支えるように立つレオンの存在に改めて気がついていた。
　心配そうな表情でクラリーチェを見つめながらユリアを睨みつける様子に（あー……そっか。　アイツ、今はクラリーチェ様の味方なのか……）と、ゆっくりと浮かしかけた腰を下ろした。

「クラリーチェ……」

　そう呼びかけたレオンは、ニコリと笑いかけながら、そっとハンカチを差し出す。
　そのハンカチをレオンの手ごと握り締めたクラリーチェは、やはりポロポロと涙をこぼしながら、訴えるように言った。