成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「その……」

 言いにくそうに言葉を濁したリアーヌに、いまだに自分と恋人たちの丘で鐘も鳴らしていなければ、鍵もかけていないことを思い出したのだと理解したゼクスは、盛大なため息をつきながら口を開いた。

「あーあ……約束したんだけどなぁー? 忘れられちゃったのかなぁー?」
「う……」
「ーーこの次はどこに行こっか?」
「……その、一緒に鐘を鳴らしていただければと……」
「ーーそれから?」
「鍵も……」
「それでそれで?」
「ーー絶対楽しんでますよね⁉︎」

 ニヤニヤとからかうように質問を重ねてくるゼクスに、リアーヌは頬を赤く染めながら言い返す。
 そんなリアーヌにゼクスは芝居がかった様子で眉を下げると、これみよがしにため息を吐き出した。

「俺ずーっと待ってたのになぁー? リアーヌが誘ってくれるの、ずぅーっと待ってたのになぁー⁇」
「ぅ……ーーそれから、その……プチシューをご一緒に……?」

 赤く染まる顔を前髪をいじりながら隠しながら、リアーヌは首を傾げてたずねる。
 そんなリアーヌに、ゼクスは満面の笑みで答えた。

「ーー喜んで」

 そしてそのまま千本鳥居のほうへ歩いて行く二人。
 上機嫌に歩くゼクスに向かって、リアーヌは気恥ずかしさをごまかすように、わざと悪態をつく。

「ーー来年私のクラスが落ちちゃったら、ゼクス様も道連れなんですからね!」
「あははっ それでヴァルムさんに叱られちゃったら、俺が慰めてあげるからね?」
「ぐぬぅ……」

 上機嫌なゼクスに軽くあしらわれ、面白くなさそうに顔をしかめるリアーヌ。
 そんな二人だったが、周囲の者たちからはじゃれあっている仲の良いカップルにしか見えなかったのだったーー



 照れながらも恋人たちの丘にやって来た二人、貸切とはいえ学科も学年も関係なく全校生徒が花園に来ているので、鐘を鳴らそうとする者たちで、それなりの長さの列が出来上がっていた。
 遠くからそれを確認しつつ、最初は鍵をかけようか? プチシューを食べて少し休憩をしようか? などと話し合っていた二人の耳に、あまり聞きたく無い声が届いた。

「私とも鐘を鳴らして欲しいの!」

 無言でその方向に視線を向け、そこにユリアが椅子ことを確認すると、二人はやはり無言で顔を見合わせた。

(よりにもよって、ユリアがレオンに鐘を鳴らそう! って誘ってるタイミングで到着するとか……)

「どう、しましょっか?」
「ーー先に休憩しよっか? ゆっくりだったけど結構歩いたし」
「ですねー……?」

 そんな会話をしながらプチシューを販売している売店へと足を向けるリアーヌたち。
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