成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「そう、なの……?」

 意外そうな表情を見せるビアンカに、リアーヌは困ったように笑いながら肩をすくめた。

「父さんの『豪運』って、嫌な感じとか気配? みたいなもので危険を教えてくれるギフトなんだけどね?」
「貴女がたまに言ってる、ゾワとかいうものね?」
「そう。 でもそのゾワッとかピリッてーーその結果、悪いことが起こりますよって時にしか発動しないの」
「その、結果……?」
「つまりーー例えば、私が転びます」
「……ええ」
「その結果、大ケガしちゃうとか、その時の傷が目立つところに残っちゃうとかーーお気に入りの服がダメになっちゃうとかなら発動するの」
「ーー貴女の不幸も子爵は回避できる、ということ?」
「……どうなんだろう? それって結局父さんのの幸運にも繋がっちゃう気がしない?」
「ーー子供の不幸は自分の不幸……?」
「うーん……ーー娘が怪我したら悲しい、不幸だ。 ってなるでしょ?」
「なるほど……」

 ビアンカが頬に手を添えながら興味深そうに考え込み始めたのを見て、リアーヌは慌てて声をかけた。

「ーーこの辺りはアロイス様と話し合ってもらっても……? 私、正解知らないからさ……?」
「それを探すのが学問でしょうに……ーー良いわ。 話を続けて?」
「了解。 じゃあさっきとは逆で、私が転ぶことで良いことが起こる場合ーー転んだら銀貨見つけたとか、転んだからこそ大ケガしなかったとかの場合ね?」
「ーーギフトは発動しないのね?」
「絶対しないね」
「やけに断言するじゃない?」
「だってうちの父さん、テーブルに足ぶつける常習犯だし、階段でも何回もつまづくから、ヴァルムさんに「手すりを持って上り下りしてください」って小言言われてるもん」
「ーーそれはしていらっしゃらないわね?」
「でしょ?」

 リアーヌとビアンカは顔を見合わせクスクスと笑い合う。

「ーーつまり……今回の一件、結果として貴女は不利益をこうむらない……?」
「多分。 あ、あとうちーーボスハウト家にとっても不利益は無いんだと思う」
「……それが分かっているなら充分なのではなくて?」
「えー……? でもその間にすごいイヤなことが起こるかもしれないよ?」
「……普通ならば、こんな悪評は人生を左右するほどのスキャンダルに発展することだってありますのよ。 それが無いと分かっているなら上々でしょう?」
「ーーそう言われると、そんな気もする……」
「……けれど、この騒ぎで貴女やボスハウト家に不利益が出ないんですのね……?」
「出て欲しいみたいな言い方……」
「そうではなくて、じゃあかの方の目的はなんでしたの?」
「そ、れはーー」
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