上 下
849 / 1,038

849

しおりを挟む
「だからこそ、クラリーチェ様の外聞には傷ひとつ付いていないーーまぁ、かの方から『けれど黒幕は……』みたいな扱いを受けていらっしゃるわけだから、お辛い立場ではあると思うけれど……」
「うん……」
「……だからと言って、ここで友人たちや護衛だけで買い物に出て、その間にまたかの方が被害に遭われたら?」
「……お店の人が証言するんじゃない? 買い物来てたよって」
「ーー貴族が嫌疑をかけられ、その貴族が懇意にしている店の店主がアリバイを証明? 物語だったら確実に偽証でしょう?」
「……確かに」
「そのほかの証言者は友人に護衛……――これではクラリーチェ様を醜聞からは守れないわ」
「……守れなさそう」
「だからこそ許可は下りないーー万が一下りたならば貴女の許可は取り消されたと言いなさい……?」
「ーー了解です……!」

 ビアンカの言葉に力強く頷き返すリアーヌ。
 リアーヌたちは全く聞いていなかったが、レジアンナの判断も「クラリーチェ許可が下りたのならば文句など言える立場では無いけれど……ーーその時はレオン様に同行していただいて、お忍びデートとしたほうがクラリーチェの気分は晴れそうじゃない?」というもので、その場合のクラリーチェのアリバイ証明をレオンに担ってもらう案を出していた。

(しっかし……考えれば考えるほどクラリーチェ様が気の毒すぎる……ーー全部が言いがかりで、クラリーチェ様は何にも悪くないのに……)

「……例えばさ? 学院の警備部とかに働きかけて、校内巡回をものすごく強化してもらったり、もういっそのこと、かの方を守ってもらうよう働きかけたら、結果的にクラリーチェ様が守られたりしないかな……?」

 ポソポソとしたリアーヌの提案は、意外に多くの者たちの興味を引いたようで、その意見に多くの者たちが耳を傾けた。

「……ーーどんな身分の者でも平等に扱う……これがこの学院のスタンスでしょう?」

 リアーヌの意見に言いにくそうに答えるビアンカ。

「うん」
「ーーだからこそ、警備部は生徒から生徒を守ったりはしないわ。 もちろん、それが命を狙っているーーともなれば動くでしょうけれど……現状は嫌がらせ……それもと言ってしまえるほどの可愛らしいものばかりですもの」

(ーーやられるほうはだなんて思ってないけどね⁉︎ ……でも、ケガすらさせられてないからなぁ……警備部の方々ってエリートだって話だし……学生同士のトラブルになんか首突っ込みたくないか……)

「そっかぁ……」

 ビアンカの言葉に納得したリアーヌは大きく肩を落としながら頷いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。

可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?

【完結】悪女のなみだ

じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」 双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。 カレン、私の妹。 私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。 一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。 「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」 私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。 「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」 罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。 本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

皇妃になりたくてなったわけじゃないんですが

榎夜
恋愛
無理やり隣国の皇帝と婚約させられ結婚しました。 でも皇帝は私を放置して好きなことをしているので、私も同じことをしていいですよね?

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。 妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。 しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。 父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。 レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。 その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。 だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

処理中です...