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しおりを挟む宿に帰りつき、寝支度を整え終わった部屋の中、リアーヌは一人しきりに首を傾げていた。
(……確かにスパの話ぐらいからはちゃんと話せてたと思うんだけどーー前半は我ながらヒドイ対応だったと自覚しているわけですが……ーーアンナさんからもオリバーさんからも、大したお小言貰わなかったなぁ……? いや、貰いはしたんだけど……もっとガッツリ叱られるもんだと……ーーよく分かんないけどラッフィナート商会の人たちからも感謝されちゃったし……ーー私、どこでどんな活躍をしてたんだろう……? まぁ、役に立ててお小言が少ないなら、問題は無いんだけどー)
そんなことを考えながら、リアーヌは眠りについた。
ーーリアーヌの幸運は翌日も続いていて、その日からの食事は、三食おやつ全てにおいて、生もの以外のアウセレ料理を好きに食べてもいいことになり、リアーヌは宿のレストランで歓声を上げることになるのだった。
◇
「リアーヌ、デートしよっか?」
「……あれ? 今日は一日、商談だって言ってませんでしたっけ?」
宿の部屋の中、リアーヌが今日はどこにおやつを買いに行こうかと頭を悩ませていると、ゼクスが突然やって来て提案した。
「んー……予定が合わなかったみたいでねー?」
「あー……急用的な?」
「そんなとこー」
肩をすくめながら肯定するが、それは“相手に予定をすっぽかされた”という意味だった。
「あ、リアーヌの宿題のスパイスまだだったでしょ? 付き合うよ」
「ありがとうございます。 あ、あと学校の“友人たち”のお土産も買っておいた方がいいだろうって……ーーやっぱり、もらっちゃった時、こっちも用意してないとマズいんですかね?」
「ーーリアーヌが考えてる以上にはマズい、かな?」
「……たくさん買って帰ろうと思います」
未成年とはいえ、軽んじられることを嫌う貴族階級の者たちだ。
自分のためにはお土産を準備していなかったと気取られれば、大いに機嫌を損ねてしまうことになるのだ。
「……お友達が増えるのも良し悪しですねぇ? 私にはビアンカだけで充分です……」
「ーーそれレジアンナ嬢やクラリーチェ嬢の前で言っちゃダメだよ? 絶対」
「……はい」
流石にリアーヌもマズいと思ったのか、眉を下げながらキュッと唇を引き結んだ。
「ーーそういえばゼクス様、フィリップ様たちの分のお土産買ったんですか?」
「アイツと俺はそういう関係じゃ無い」
ピシャリと答えられ、リアーヌは「ええ……?」と困惑した声を上げる。
「ーーでも、向こうから貰うかもしれませんよ?」
そんなリアーヌの言葉を「はっ!」と鼻で笑うゼクス。
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