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 そこまで考えて、リアーヌは内心で小さく首を傾げた。

(……この辺りのこと考え始めると、いつも頭ぐちゃぐちゃになっちゃうんだよよなぁー。 ーー結局答え合わせなんか出来ないし……っと、今はスパだよスパ)

 リアーヌは期待のこもった眼差しの夫人と目が合い、笑顔で取り繕いながら口を開いた。

「ーーなにか……洗面器のようなものをお借りできますか?」

 そうたずねたリアーヌの言葉をきっかけに、タカツカサ家の使用人たちが動き初め、スパの説明は実演と共に、とてもスムーズに行われたのだったーー



「ーー素晴らしいわ⁉︎」

 夫人は自分の右手と左手を見比べながら驚愕に目を丸く見開いていた。

(ーーまぁ、その見た目のほとんどはお風呂マジックだったりしますが……ーーでも本当に温泉の成分はお肌にいいし、マッサージも効果的だから、嘘なんかついてないんだからね……!)

 嬉しそうな夫人に、ゼクスが商人にしか見えない笑顔を浮かべながら声をかける。

「お美しい奥様におかれましては、まだまだ必要のないものではございますが……実際に体験された方たちからは、肌のくすみやたるみ、シワなどの改善も実感した、というお声も頂戴していまして……私共としては、これはそれらの予防にもいいのではないかと考えているんです」
「ーーくすみ……シワの予防……」

 夫人はトーンアップした自分の右手となにもしなかった左手を見比べて、再度ギラリと瞳を輝かせた。

(わぁ……ーー入ってみたいって海外から戻ってこられた大奥様がスパ経験した時の顔に似てる……ーー結局、ゼクスが育ててたスパ持ちマッサージ師さん、一人引き抜いて、また諸国漫遊の旅に出ちゃったし……ーー私としては珍しいお土産たくさんもらえてハッピーだったけどー……)

 リアーヌはチラリとゼクスを見つめながら少しだけ気の毒そうに眉を下げた。
 ーー実際のところは、諸外国のさまざまなな情報や特産品の紹介などの情報と交換だったので、ゼクスとしてもラッフィナート紹介としても、見返りとしては充分だったのだがーー
 ……開店を急かされているゼクスとしては、マッサージ師を一人引き抜かれるのは手痛い出来事だったようだ。

「ーーつまり男爵は、この『スパ』のギフトを扱える方々を複数雇われている、と?」
「はい。 大人数を収容できる湯場で手軽に湯を楽しんでもらえる場と、完全個室でプライベートな空間を確保しつつ湯を楽しんでいただく場をーー兼ね備えた施設となっておりますので……」
「まぁ……! 行ってみたいわ?」
「ーーいつかはいけるんだろうけどね……?」
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