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「ーーぜひとも堪能させていただきます!」
「リアーヌ……?」
「あっ……ーーその、次こそは奥様とのお話も楽しみながら、美味しく堪能できればと……」
「あははっ やっぱりリアーヌ様は大物でいらっしゃる!」
リアーヌからデザートを諦める気配を全く感じなかった伯爵は、思わず吹き出しながらリアーヌを褒めそやす。
「あら、レディに大物だなんて……ーーリアーヌ様は天真爛漫なのよね?」
「ーー天真爛漫のほうでいければと……」
「これは失礼。 そうだね、実に天真爛漫でいらっしゃる」
女性陣の会話に、伯爵はクスクスと笑いながら同意した。
「それにお肌もプルプルで……若いっていいわねぇー……」
今日の食事会のためにピカピカに磨かれたリアーヌの肌を見つめ、夫人は簡単のため息を漏らした。
(ーー分かるぅ。 自分で見ても今日の私のお肌ってばツルスベふわふわだもの……)
「きっとそれは若さのおかげではなく、うちの使用人と『スパ』のおかげだと思います」
ゼクスが運営するスパ施設がもうすぐオープンを迎えるということで、リアーヌはこの夏、その宣伝に余念が無かった。
どこに行くにも好きあらばその話を差し込みスパ施設の宣伝を行なっていた結果なのか、その言葉は思いの外するりとリアーヌ口から飛び出していた。
「ーースパ……?」
ことさら優しく甘い声色で夫人が首を傾げる。
(……あれ? なんだろう今この人の目、ギラって……? 気のせい?)
「あらいやだ! 私としたことが男爵にお茶もお出ししないで! ーーどうぞお座りになって?」
「……えっと?」
帰りの挨拶をするタイミングを窺っていたゼクスは、急な話の方向転換に困惑気味に答えを探しながら伯爵を見つめた。
「お茶の一杯くらいよろしいでしょう? ーーね、あなた?」
ゼクスの困惑を感じ取り、自分の妻を宥めようとしていた伯爵だったが、美しい笑顔で呼びかけられた瞬間、ピクリと身体を震わせ、ニコリとゼクスに向き直り口を開いた。
「ーーそれもそうだ。 これでお別れというのも忍びない……どうぞ? うちはお茶も絶品だよ?」
「……では、遠慮なく?」
笑顔の夫妻に、ゼクスは困ったように小さく肩をすくめながらリアーヌの隣に腰を下ろした。
(あ、これ気のせいじゃないね? なんかロックオンされてますよね……?)
リアーヌはキョドキョドと戸惑いながらも、ゼクスの隣でちょこりと座り直した。
「ーーそれでスパというものはどんなものなのかしら?」
人数分のお茶が用意されると、夫人がにこやかに話を切り出した。
しかしその顔は捕食者のようにギラギラと輝いていて、リアーヌはヒクリと頬を引きつらせた。
「リアーヌ……?」
「あっ……ーーその、次こそは奥様とのお話も楽しみながら、美味しく堪能できればと……」
「あははっ やっぱりリアーヌ様は大物でいらっしゃる!」
リアーヌからデザートを諦める気配を全く感じなかった伯爵は、思わず吹き出しながらリアーヌを褒めそやす。
「あら、レディに大物だなんて……ーーリアーヌ様は天真爛漫なのよね?」
「ーー天真爛漫のほうでいければと……」
「これは失礼。 そうだね、実に天真爛漫でいらっしゃる」
女性陣の会話に、伯爵はクスクスと笑いながら同意した。
「それにお肌もプルプルで……若いっていいわねぇー……」
今日の食事会のためにピカピカに磨かれたリアーヌの肌を見つめ、夫人は簡単のため息を漏らした。
(ーー分かるぅ。 自分で見ても今日の私のお肌ってばツルスベふわふわだもの……)
「きっとそれは若さのおかげではなく、うちの使用人と『スパ』のおかげだと思います」
ゼクスが運営するスパ施設がもうすぐオープンを迎えるということで、リアーヌはこの夏、その宣伝に余念が無かった。
どこに行くにも好きあらばその話を差し込みスパ施設の宣伝を行なっていた結果なのか、その言葉は思いの外するりとリアーヌ口から飛び出していた。
「ーースパ……?」
ことさら優しく甘い声色で夫人が首を傾げる。
(……あれ? なんだろう今この人の目、ギラって……? 気のせい?)
「あらいやだ! 私としたことが男爵にお茶もお出ししないで! ーーどうぞお座りになって?」
「……えっと?」
帰りの挨拶をするタイミングを窺っていたゼクスは、急な話の方向転換に困惑気味に答えを探しながら伯爵を見つめた。
「お茶の一杯くらいよろしいでしょう? ーーね、あなた?」
ゼクスの困惑を感じ取り、自分の妻を宥めようとしていた伯爵だったが、美しい笑顔で呼びかけられた瞬間、ピクリと身体を震わせ、ニコリとゼクスに向き直り口を開いた。
「ーーそれもそうだ。 これでお別れというのも忍びない……どうぞ? うちはお茶も絶品だよ?」
「……では、遠慮なく?」
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(あ、これ気のせいじゃないね? なんかロックオンされてますよね……?)
リアーヌはキョドキョドと戸惑いながらも、ゼクスの隣でちょこりと座り直した。
「ーーそれでスパというものはどんなものなのかしら?」
人数分のお茶が用意されると、夫人がにこやかに話を切り出した。
しかしその顔は捕食者のようにギラギラと輝いていて、リアーヌはヒクリと頬を引きつらせた。
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