804 / 1,038
804
しおりを挟む
ゼクスは店員の言葉に困ったように笑いながら答える。
「なるほどぉ……?」
そう答えた店員はそのまま顔をしかめながら更に口を開いた。
「くっそぉ……まんまと思惑にハマったなぁ……」
そう言いながら悔しそうにガシガシと頭をかく店員。
「……ダメ、なんです?」
そんな店員の姿を見つめながらリアーヌは不思議そうに首をかしげた。
(別にこの人はなんのそんもしてないのに、なんでこんなに悔しがってるの……?)
「……ダメじゃ無いけど、ねぇ?」
そう答えたゼクスが声をかけたのは、悔しそうにしている店員、その人だった。
店員はぶっすりと顔をしかめながら答える。
「……他の商人の思惑にハマると、なんか負けた気になるだろ?」
「ーーええ……?」
「ーー分かります……」
リアーヌとゼクスは同時に全く違った反応を返し、店員はゼクスと無言のままに固い握手を交わし合う。
その光景を見て、なんだか疎外感を感じたリアーヌは、少し視線を揺らしながら口を開く。
「……私も分かりますし。 ーーちゃんと悔しいですし」
そんなリアーヌの態度にクスリと笑ったゼクスは少しからかうような視線で「そうなんだ?」とたずねる。
「もちろんですし!」
「ふふっ ならリアーヌも立派な商人だね?」
その言葉にリアーヌは意味もなく胸を張って答える。
そんな二人のやり取りにケラケラと声を上げて笑い出す店員。
「あははっ! いや本当に仲が良いなぁ? うちは大体ここら辺で店構えてるからよ、ま他甘い果物が食いたくなったら会いにきてくれや!」
「ぜひ」
そんな会話と共に売買を完了させた一行は、たくさんのメロンを抱え、帰路に着くのだったーー
「このメロン、氷魔法で冷やして食べましょうね!」
「あー良いねぇ?」
「あ、これでかき氷のシロップ作っても美味しそう! ーーそれとももういっそメロンそのものを凍らせてシャーベットにしましょうか?」
「ーーうんうん。 他には?」
そんな会話をしつつ、一行はバザールを後にするのだったーー
◇
「ーーうなぎ⁉︎ これ食べても良いんですか⁉︎」
目の前に広がる数々の和食ーーアウセレ料理に、リアーヌは完成を上げながらテーブルに走り寄った。
その部屋は畳の部屋に絨毯を敷き、そこにテーブルと椅子を並べた、豪華で上品な和モダンな空間だった。
「ちょ、リアーヌ……!」
急に料理に向かって行ったリアーヌをゼクスが小声で呼び止めるが、リアーヌの瞳には、もはや食べ物しか写っていなかった。
顔色を悪くするゼクスの後ろには、もっと顔色を悪くしているアンナとオリバーの姿も見えたーー
「なるほどぉ……?」
そう答えた店員はそのまま顔をしかめながら更に口を開いた。
「くっそぉ……まんまと思惑にハマったなぁ……」
そう言いながら悔しそうにガシガシと頭をかく店員。
「……ダメ、なんです?」
そんな店員の姿を見つめながらリアーヌは不思議そうに首をかしげた。
(別にこの人はなんのそんもしてないのに、なんでこんなに悔しがってるの……?)
「……ダメじゃ無いけど、ねぇ?」
そう答えたゼクスが声をかけたのは、悔しそうにしている店員、その人だった。
店員はぶっすりと顔をしかめながら答える。
「……他の商人の思惑にハマると、なんか負けた気になるだろ?」
「ーーええ……?」
「ーー分かります……」
リアーヌとゼクスは同時に全く違った反応を返し、店員はゼクスと無言のままに固い握手を交わし合う。
その光景を見て、なんだか疎外感を感じたリアーヌは、少し視線を揺らしながら口を開く。
「……私も分かりますし。 ーーちゃんと悔しいですし」
そんなリアーヌの態度にクスリと笑ったゼクスは少しからかうような視線で「そうなんだ?」とたずねる。
「もちろんですし!」
「ふふっ ならリアーヌも立派な商人だね?」
その言葉にリアーヌは意味もなく胸を張って答える。
そんな二人のやり取りにケラケラと声を上げて笑い出す店員。
「あははっ! いや本当に仲が良いなぁ? うちは大体ここら辺で店構えてるからよ、ま他甘い果物が食いたくなったら会いにきてくれや!」
「ぜひ」
そんな会話と共に売買を完了させた一行は、たくさんのメロンを抱え、帰路に着くのだったーー
「このメロン、氷魔法で冷やして食べましょうね!」
「あー良いねぇ?」
「あ、これでかき氷のシロップ作っても美味しそう! ーーそれとももういっそメロンそのものを凍らせてシャーベットにしましょうか?」
「ーーうんうん。 他には?」
そんな会話をしつつ、一行はバザールを後にするのだったーー
◇
「ーーうなぎ⁉︎ これ食べても良いんですか⁉︎」
目の前に広がる数々の和食ーーアウセレ料理に、リアーヌは完成を上げながらテーブルに走り寄った。
その部屋は畳の部屋に絨毯を敷き、そこにテーブルと椅子を並べた、豪華で上品な和モダンな空間だった。
「ちょ、リアーヌ……!」
急に料理に向かって行ったリアーヌをゼクスが小声で呼び止めるが、リアーヌの瞳には、もはや食べ物しか写っていなかった。
顔色を悪くするゼクスの後ろには、もっと顔色を悪くしているアンナとオリバーの姿も見えたーー
0
お気に入りに追加
343
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
断罪イベント? よろしい、受けて立ちましょう!
寿司
恋愛
イリア=クリミアはある日突然前世の記憶を取り戻す。前世の自分は入江百合香(いりえ ゆりか)という日本人で、ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢で、そしてイリア=クリミアは1/1に起きる断罪イベントで死んでしまうということを!
記憶を取り戻すのが遅かったイリアに残された時間は2週間もない。
そんなイリアが生き残るための唯一の手段は、婚約者エドワードと、妹エミリアの浮気の証拠を掴み、逆断罪イベントを起こすこと!?
ひょんなことから出会い、自分を手助けしてくれる謎の美青年ロキに振り回されたりドキドキさせられながらも死の運命を回避するため奔走する!
◆◆
第12回恋愛小説大賞にエントリーしてます。よろしくお願い致します。
◆◆
本編はざまぁ:恋愛=7:3ぐらいになっています。
エンディング後は恋愛要素を増し増しにした物語を更新していきます。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる