795 / 1,038
795
しおりを挟む
「んー……下が桜なら上も桜か……矢柄か……」
そう呟きながら、いくつかの着物を取っていく青年。
(袴に桜が描かれてたら上も無いとおかしかったりする……? でもーー)
リアーヌは少し迷いながらも青年が取らなかった白地の着物を指差した。
「あれが可愛いと思ってて……ーーその一番手前の……あれを合わせるのはおかしいですか?」
リアーヌの言葉に、青年がチラリと祖母に視線を走らせる。
それに答えるように頷く女店主。
「……合わせておやり」
「おう。 ーーこんな感じだ……そこまで変じゃねぇな?」
「牡丹はボタンなんだろうが、かなり抽象的な柄になってるからねぇ? 気にしないヤツのほうが多そうだ」
その言葉にゼクスが反応する。
「ーー普通は上と下の花を合わせるものですか?」
「花というか、柄同士の季節を合わせるやつは多いーーだが、そんな決まりがある訳じゃ無いんだ。 合わせやすいとかまとまって見えるとか……そんな理由さ。 合わせておかしく見えなきゃ多くのヤツは気になんかしない」
「……マナー違反とは言われない?」
「ーーこれはアタシの持論だが、他人の着ている服にゴチャゴチャ言うやつのほうが礼儀知らずさね。 だが……どこにだって自分の考えを押し付ける迷惑なヤツはいるだろう? その柄は今の季節じゃ無いだのその色とこの色は会わないだの……」
その店主の言葉にゼクスとリアーヌはアゴを見合わせ困ったように肩をすくめ合う。
貴族、平民、男女関わらず、そういう人物がいるとこれまでの経験から知っていた。
「そういう文句を言うヤツはいても、マナー違反だとまでは言われないだろうーーアンタらがディスディアスの人だってなら余計にね」
「なるほど……」
「ああ……それよりも着方を間違えないようにね。 左前は嫌な顔をされる可能性が高いよ」
「左前……?」
店主からの助言にリアーヌたちは首を傾げる。
(ってなんだっけ? 聞いたことがあるような、無いような……?)
「着物の合わせ方なんだが、あー……」
店主はそう言いながら近くにあった布を羽織りながら説明を続ける。
「着物はこうやって合わせて着付ける。 右手で持っている方を先に巻きつけるーーつまり右を左より前に巻く。 その後が左になるんだが、それを逆にすると左を先ーー前に巻くことになるだろう?」
「だから左前……」
「ああ。 これをやると死んだ人と一緒になって縁起が悪い。 これを嫌がるヤツは多い……ーーこのババも含めてな?」
カカカッと笑いながら言う店主にそばにいた青年も、困ったように肩をすくめているが、同意するように頷いている。
そう呟きながら、いくつかの着物を取っていく青年。
(袴に桜が描かれてたら上も無いとおかしかったりする……? でもーー)
リアーヌは少し迷いながらも青年が取らなかった白地の着物を指差した。
「あれが可愛いと思ってて……ーーその一番手前の……あれを合わせるのはおかしいですか?」
リアーヌの言葉に、青年がチラリと祖母に視線を走らせる。
それに答えるように頷く女店主。
「……合わせておやり」
「おう。 ーーこんな感じだ……そこまで変じゃねぇな?」
「牡丹はボタンなんだろうが、かなり抽象的な柄になってるからねぇ? 気にしないヤツのほうが多そうだ」
その言葉にゼクスが反応する。
「ーー普通は上と下の花を合わせるものですか?」
「花というか、柄同士の季節を合わせるやつは多いーーだが、そんな決まりがある訳じゃ無いんだ。 合わせやすいとかまとまって見えるとか……そんな理由さ。 合わせておかしく見えなきゃ多くのヤツは気になんかしない」
「……マナー違反とは言われない?」
「ーーこれはアタシの持論だが、他人の着ている服にゴチャゴチャ言うやつのほうが礼儀知らずさね。 だが……どこにだって自分の考えを押し付ける迷惑なヤツはいるだろう? その柄は今の季節じゃ無いだのその色とこの色は会わないだの……」
その店主の言葉にゼクスとリアーヌはアゴを見合わせ困ったように肩をすくめ合う。
貴族、平民、男女関わらず、そういう人物がいるとこれまでの経験から知っていた。
「そういう文句を言うヤツはいても、マナー違反だとまでは言われないだろうーーアンタらがディスディアスの人だってなら余計にね」
「なるほど……」
「ああ……それよりも着方を間違えないようにね。 左前は嫌な顔をされる可能性が高いよ」
「左前……?」
店主からの助言にリアーヌたちは首を傾げる。
(ってなんだっけ? 聞いたことがあるような、無いような……?)
「着物の合わせ方なんだが、あー……」
店主はそう言いながら近くにあった布を羽織りながら説明を続ける。
「着物はこうやって合わせて着付ける。 右手で持っている方を先に巻きつけるーーつまり右を左より前に巻く。 その後が左になるんだが、それを逆にすると左を先ーー前に巻くことになるだろう?」
「だから左前……」
「ああ。 これをやると死んだ人と一緒になって縁起が悪い。 これを嫌がるヤツは多い……ーーこのババも含めてな?」
カカカッと笑いながら言う店主にそばにいた青年も、困ったように肩をすくめているが、同意するように頷いている。
0
お気に入りに追加
344
あなたにおすすめの小説
【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる