成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「服装でなんとなくなー? こっちは湿度が高いから、向こうの服じゃ過ごし辛いんじゃ無いか? ーーどうだい一着? 安くしとくぜー?」

 そういうと、その青年は少し高いところに吊るされている着物やはかまをくいくいと親指で指した。

「あれはこの国の……?」
「おう。 布が重なってるように見えるが、全部薄手だからな、案外涼しいんだ」

(袴だ! 大正ロマン! 可愛い!)

 瞳を輝かせてそれらを見ているリアーヌに気がついたゼクスは、クスリと笑いながら青年に話しかける。

「どんな柄や色が売れ筋ですかね?」
「そうだなぁ……袴にしろ着物にしろ赤系統は人気だな。 だからこそ青や緑が良いなんてもいるが……ああ、上をハデにする気なら紺や黄色にする場合もあるな」
「ーーなるほど……?」

 青年の説明に、ゼクスは困ったように言葉を濁しながらテントの骨組みにぶら下がる色とりどりの袴を見つめた。
 そんなゼクスに、女店主がケラケラと笑いながら声をかける。

「赤い袴にするなら上はおとなしめの色合いがおすすめで、上の着物を華やかにするなら袴は濃い色合いが合わせやすいんじゃ無いかね?」
「あー……リアーヌ着物でも袴でも気になったやつはある?」
「……え、買うんですか?」
「ーー確かにこの服少し暑いし……アウセレに来てるんだからアウセレの服着てアウセレのバザールを楽しんでも誰にも文句言われないよ」

 その言葉にリアーヌはチラリとアンナたちを振り返り、二人が軽く頷くのを見て満面の笑顔をゼクスに向けた。

「どれが良い?」
「えっと……」

 ゼクスに尋ねられ、リアーヌは飾られている袴にジッと視線をこらす。
 そしてその中の一枚に目を止めた。

(あの袴……色合いはちょっと暗めのえんじ色だけど、太ももあたりから裾にかけて入ってる桜の花や花びらの柄がキレイ……)

「ーーこれかい?」

 リアーヌの視線が止まったのを見た青年は、棒のような器具を使って器用にその袴を下ろすと、リアーヌからよく見えるように掲げた。

「……変、ですかね?」

(自分に似合うかどうかなんか全く考えずに、好きな柄ってだけで選んじゃったけど……ーー絶望的に似合わなかったらどうしよう……?)

 リアーヌは不安そうにゼクスにたずねるが、ゼクスよりも先に口を開いたのは女店主だった。

「変な商品なんてうちじゃ取り扱ってないよ。 そうさね……それに合わせるなら……ーーあの白地のあたりかね?」

 不安そうなリアーヌを笑い飛ばしながら、青年に指示を出して着物を取り外させる。
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