794 / 1,038
794
しおりを挟む
「服装でなんとなくなー? こっちは湿度が高いから、向こうの服じゃ過ごし辛いんじゃ無いか? ーーどうだい一着? 安くしとくぜー?」
そういうと、その青年は少し高いところに吊るされている着物や袴をくいくいと親指で指した。
「あれはこの国の……?」
「おう。 布が重なってるように見えるが、全部薄手だからな、案外涼しいんだ」
(袴だ! 大正ロマン! 可愛い!)
瞳を輝かせてそれらを見ているリアーヌに気がついたゼクスは、クスリと笑いながら青年に話しかける。
「どんな柄や色が売れ筋ですかね?」
「そうだなぁ……袴にしろ着物にしろ赤系統は人気だな。 だからこそ青や緑が良いなんて娘もいるが……ああ、上をハデにする気なら紺や黄色にする場合もあるな」
「ーーなるほど……?」
青年の説明に、ゼクスは困ったように言葉を濁しながらテントの骨組みにぶら下がる色とりどりの袴を見つめた。
そんなゼクスに、女店主がケラケラと笑いながら声をかける。
「赤い袴にするなら上はおとなしめの色合いがおすすめで、上の着物を華やかにするなら袴は濃い色合いが合わせやすいんじゃ無いかね?」
「あー……リアーヌ着物でも袴でも気になったやつはある?」
「……え、買うんですか?」
「ーー確かにこの服少し暑いし……アウセレに来てるんだからアウセレの服着てアウセレのバザールを楽しんでも誰にも文句言われないよ」
その言葉にリアーヌはチラリとアンナたちを振り返り、二人が軽く頷くのを見て満面の笑顔をゼクスに向けた。
「どれが良い?」
「えっと……」
ゼクスに尋ねられ、リアーヌは飾られている袴にジッと視線をこらす。
そしてその中の一枚に目を止めた。
(あの袴……色合いはちょっと暗めのえんじ色だけど、太ももあたりから裾にかけて入ってる桜の花や花びらの柄がキレイ……)
「ーーこれかい?」
リアーヌの視線が止まったのを見た青年は、棒のような器具を使って器用にその袴を下ろすと、リアーヌからよく見えるように掲げた。
「……変、ですかね?」
(自分に似合うかどうかなんか全く考えずに、好きな柄ってだけで選んじゃったけど……ーー絶望的に似合わなかったらどうしよう……?)
リアーヌは不安そうにゼクスにたずねるが、ゼクスよりも先に口を開いたのは女店主だった。
「変な商品なんてうちじゃ取り扱ってないよ。 そうさね……それに合わせるなら……ーーあの白地のあたりかね?」
不安そうなリアーヌを笑い飛ばしながら、青年に指示を出して着物を取り外させる。
そういうと、その青年は少し高いところに吊るされている着物や袴をくいくいと親指で指した。
「あれはこの国の……?」
「おう。 布が重なってるように見えるが、全部薄手だからな、案外涼しいんだ」
(袴だ! 大正ロマン! 可愛い!)
瞳を輝かせてそれらを見ているリアーヌに気がついたゼクスは、クスリと笑いながら青年に話しかける。
「どんな柄や色が売れ筋ですかね?」
「そうだなぁ……袴にしろ着物にしろ赤系統は人気だな。 だからこそ青や緑が良いなんて娘もいるが……ああ、上をハデにする気なら紺や黄色にする場合もあるな」
「ーーなるほど……?」
青年の説明に、ゼクスは困ったように言葉を濁しながらテントの骨組みにぶら下がる色とりどりの袴を見つめた。
そんなゼクスに、女店主がケラケラと笑いながら声をかける。
「赤い袴にするなら上はおとなしめの色合いがおすすめで、上の着物を華やかにするなら袴は濃い色合いが合わせやすいんじゃ無いかね?」
「あー……リアーヌ着物でも袴でも気になったやつはある?」
「……え、買うんですか?」
「ーー確かにこの服少し暑いし……アウセレに来てるんだからアウセレの服着てアウセレのバザールを楽しんでも誰にも文句言われないよ」
その言葉にリアーヌはチラリとアンナたちを振り返り、二人が軽く頷くのを見て満面の笑顔をゼクスに向けた。
「どれが良い?」
「えっと……」
ゼクスに尋ねられ、リアーヌは飾られている袴にジッと視線をこらす。
そしてその中の一枚に目を止めた。
(あの袴……色合いはちょっと暗めのえんじ色だけど、太ももあたりから裾にかけて入ってる桜の花や花びらの柄がキレイ……)
「ーーこれかい?」
リアーヌの視線が止まったのを見た青年は、棒のような器具を使って器用にその袴を下ろすと、リアーヌからよく見えるように掲げた。
「……変、ですかね?」
(自分に似合うかどうかなんか全く考えずに、好きな柄ってだけで選んじゃったけど……ーー絶望的に似合わなかったらどうしよう……?)
リアーヌは不安そうにゼクスにたずねるが、ゼクスよりも先に口を開いたのは女店主だった。
「変な商品なんてうちじゃ取り扱ってないよ。 そうさね……それに合わせるなら……ーーあの白地のあたりかね?」
不安そうなリアーヌを笑い飛ばしながら、青年に指示を出して着物を取り外させる。
7
お気に入りに追加
372
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

メイドを目指したお嬢様はいきなりのモテ期に困惑する
Hkei
恋愛
落ちぶれ子爵家の長女クレア・ブランドンはもう貴族と名乗れない程苦しくなった家計を助けるため、まだ小さい弟の為出稼ぎに行くことにする。
母の知り合いの公爵夫人の力を借りて住み込みのメイドになるクレア。
実家である程度家事もやっていたり、子爵令嬢としての教育も受けてるクレアはメイドとしては有能であった。
順調に第2の人生を送っていたのに招かざる来訪者が来てからクレアの周りは忙しくなる。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

【本編完結】政略結婚お断り、逆境に負けず私は隣国で幸せになります
葵井瑞貴
恋愛
「お前は俺の『物』だ」――夜会で傲慢な侯爵子息テオに見そめられてしまった令嬢ソフィア。
女性を物扱いする彼との政略結婚から逃れるため、一人異国へ旅立つ――。
そこで出会ったのは、美貌の貴公子アーサーと個性豊かな仲間たち。
新天地で平穏な日々を送っていたソフィアだが、テオが追って来て国に連れ帰ろうとする。
さらに、祖国とリベルタ王国が戦争間近の緊張状態になり、ソフィアは貴族の陰謀に巻き込まれていく。
宿命としがらみ。貴族の思惑と陰謀。入り乱れる恋の矢印と絡み合う恋模様――。
主人公ソフィアを中心に様々な人の縁が広がり交わって、やがて一筋の明るい未来に繋がる。
これは、どんな逆境にも負けず、自分らしく生きることを諦めない、令嬢ソフィアが幸せになるまでのラブストーリー。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結】ちびっ子元聖女は自分は成人していると声を大にして言いたい
かのん
恋愛
令嬢に必要な物は何か。優雅さ?美しさ?教養?どれもこれも確かに必要だろう。だが、そうではない。それがなければ、見向きもされず、それがなければ、壁の花にすらなれない。それとはなにか。ハッキリ言おう。身長である!!!
前世聖女であったココレットが、今世は色恋に花を咲かせようと思っていた。しかし、彼女には今世身長が足りなかった。
これは、自分は成人していると声を大にして言いたい元聖女のはじまりの話。
書きたくなって書いた、勢いと思いつきのお話です。それでも良い方はお読みください。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる