成り上がり令嬢暴走日記！

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「ーーえ、安⁉︎」

　布に気を取られていたリアーヌの耳には入らなかったようだったーー
　リアーヌの言葉にゼクスもその品物の値段を確認して大きく目を見開く。
　それには、多少の訳があったとしても掘り出し物と呼ばれるほどには安い値札が付けられていた。

「そうじゃろ？　だが、物は良いんだ。　品質は保証する。　涼しくて今にぴったりの布だよ」

　そんなご年配の女性店主の言葉に、ゼクスはなるほど……と、大体の事情を察していた。

（ーーつまりこの布は、今売り切らないと季節遅れ、型落ち品になるわけか……ーーそれを大幅値下げして、目玉商品に変えている……このばーさん意外にやるなぁ……今ならまだ全然売れるし、目玉があれば他の商品だって売れるもんなぁ……）

　ゼクスが興味深そうな視線を店主に向けていることに気がついているのかいないのか、その店主は興味深そうに布を見ているリアーヌにセールストークを開始した。

「ワンピースにもなるし、浴衣がわりにもなるーー隣の良い人を喜ばせなたいなら素肌に羽織ったってええがね！」
「ぉう……」

　店主からの言葉にリアーヌが頬を染め黙り込んでしまうと、すかさず店の奥から青年のたしなめるような声が飛ぶ。

「ばっちゃ！　そういうのセクハラだって言ってんだろ！」
「はっ！　生意気お言いでないよ！　なんと言おうが結局男はみんなこういうスケスケが好きなんだよ！」

　そう言いながら立ち上がり、前掛けを持ち上げながら足を見せる店主。
　店主がはいていたゆったりとしたシルエットのズボンは、色合いこそ落ち着いているものの、よく見ると店に飾られている薄手の布と同じもののようだった。
　店主が座っていたところは日陰になっているため見えずらいが、日の当当たる場所に出れば、それなりに体のラインが強調される服のようだ。

「やめろって！　そんなもん見せて、猥褻物陳列罪で捕まってもしらねぇぞ？」
「なんて言い草だい！　口のへらない子だね！」

　怒った口調の店主だったが、その顔は
どことなく楽しそうで、交わされている言葉とは裏腹に、仲の良さが伝わってくるようだった。

「けど、お嬢さんなら喜ばれるのかもなぁ？」

　両手いっぱいに商品を抱えて店先まで出てきた青年は、ニヤリと笑いながらゼクスの方に視線を流す。
　そして商品を並べながらチラリとリアーヌたちの服装に視線を走らせた。

「ーーあんたらデイスティアスからの人かい？」
「……そうですね。　やはり分かりますか？」

　青年からの質問に、ゼクスがほんの少し警戒心を抱きながら、笑顔で答えた。