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「うわぁ……大きなマーケットですねぇ……?」
「アウセレでも三本の指に入るって言われるほどには大きなとこだよ。 港も近いからさまざまな国の商品も取り扱ってるし……品揃えだけで言ったらアウセレで一番だと思う」
「ふぁー……」

 リアーヌは目の前いっぱいに広がる大きなバザールの店々に圧倒されたように感嘆の声を上げながら、辺りをぐるりと見渡していく。

(インドっぽいものや中国っぽいものもある。 このバザールもザ・日本みたいな感じじゃないし……アウセレって日本そのもの! みたいな国じゃ無いのかな? ーーそういえば宿の人やさっきのおっちゃんも着物じゃなかったなぁ……普通の洋服ーーうちの国と比べるとシルエットが、ゆるだぼっとしてるヤツだけど、和服じゃ無かった……ーーま、日本だって和服で暮らしてる人の方が珍しいもんね、そんな感じかー)

「リアーヌの大活躍でとってもいい取引が出来たことだし……ボーナスも兼ねて観光してこう?」

 その言葉に満面の笑みを浮かべたリアーヌだったが、少し考えるそぶりを見せてからポソポソと小声でゼクスにとある提案をする。

「ーー……お寿司とか?」

 その言葉にゼクスは大きくため息をつきながらリアーヌに呆れた顔を向ける。

「……たまごのやつは食べたでしょ? あと……茶色いのに入ってたやつ」

 その答えにリアーヌは盛大に顔を顰めた。

「たまごとおいなりさんは生ずしじゃありませんもん……」

(せっかく……せっかくあの宿のメニューに握り寿司があったのにっ! 食べさせてもらえたのは、たまごといなり寿司だけ! サーモンやイクラもあったのに……イクラなんか醤油付けになってるんだからそこまでうるさく言わなくったっていいのに……)

「そんな顔して……あのパスタみたいなのは美味しい美味しいって食べてただろ?」
「ラーメンとお寿司は違いますぅー……」
「それはそうなんだけど……ーーあ、この布素敵だね? それに薄手で涼しそうだ」

 ゼクスは更に顔をしかめたリアーヌに苦笑しつつ、なんとか話題を変えようと手近にあった店の商品を指差した。

「布は食べられませんからー……あ、可愛い」

 ぶぅ……と頬を膨らませながら返したリアーヌだったが、目にした布の、向こうが透けるほどの薄さと、鮮やかな色合い、そしてデフォルメされたかわいい花の模様に、思わず頬を緩ませていた。

「……良かった。 ーーもう食べ物から離れてくれないのかと……」

 ホッとしたような小さなゼクスの呟きを拾った護衛たちが笑いを噛み殺し、アンナたちがほんの少しだけ申し訳なさそうに眉を下げる。
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