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(昨日なんか、アンナさんやオリバーさんに回復とか沢山かけて、ようやく使い切れたんだよねー)

「ーー使い切るまでやってたんだ……?」
「使い切るとぐっすり眠れるんですよ。 揺れで起きることもなく、毎日快眠でした!」
「それはなによりだけど……そっか、だから船員たちのお風呂の準備まで手伝ってだんだね……?」
「スパ結構匂いますから、嫌がられるかなー? とか思ってましたけど、意外に好評でした! ……お世辞かもですけど……」

 ニコニコと話していたリアーヌだったが、オットマーからの視線を感じ取り、少し迷うように言葉を付け加える。
(雇い元の御曹司の婚約者にあんまり文句とか言えないか……)と考えながら。

「いやいやいや! みんな大喜びでしたよ! 風呂だけでも嬉しいのに最近噂になってるスパでしょう? 思い込みかもしれませんが、いつもより身体が軽い気がするってウワサにまでなって!」
「……俺も毎日風呂に入れるとは思って無かったなー……スパの良さにも気がつけたしーーあれ普通のお湯より身体があったまるね? 血行が良くなってたから健康にも効くよ」
「ーー普通は毎日シャワーですか?」
「……それも海水のね」
「ぇっ……?」

 ゼクスの言葉にリアーヌは目を大きく見開いて絶句し、ゼクスはそんなリアーヌに頷きながら肩をすくめてオットマーを見つめる。

「ーー海水が嫌なヤツは身体拭いて終わりッスね?」

 リアーヌはその答えに、さらに瞳を大きく見開く。

「今回はリアーヌも同行してたから水持ちも入れてもらったけど、いないことのほうが多いんだ。 そうなると、船の上での水は想像している以上に貴重なものになる。 今回みたいに快晴ばかりの船旅なら余計にね?」
「あ、雨水……?」
「そうーー今回に限っていてば、二日以上も予定を前倒しにしてるから水の心配なんてしなくて済んだけど、陸も見えて無いのに、真水を風呂になんか使えないよ。 飲み水が無くなったら命に関わる」
「ーーこんな真夏で肉体労働で風呂無し……?」
「……しんどいことは確かだけど、日に日に空になってく水樽見てたら、それでも風呂に入りたいなんて思えないよーー予定が後ろにずれ込むこともあれば……万が一の可能性だけど、遭難する可能性だってゼロじゃ無いんだ。 そうなったら今ある水で生き延びなきゃいけない」
「ーー遭難……スパが飲めるかどうか確認しときます?」

(一応あるよね、飲める温泉って……ーー硫黄系の温泉だったのかどうかは覚えてないけど……)

 リアーヌの提案にゼクスは少し頬を引きつらせながら「それは最悪の事態が起こってから考えよ……?」と提案する。
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