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「……おう。 無理はすんなよ?」

 リアーヌからの提案に頷いた船員だったが、すぐさま仲間たちと視線を交わし合い、心配そうな顔をリアーヌに向けていた。

「ーーお嬢まだ力使えるか?」
「うん? まだ全然余裕だよ?」
「マジかよ……俺たちだって力の量には自信があるが……ーーお嬢が一番多いんじゃねぇか……?」
「貴族ってのはそんなとこまでスゲーのかねぇ……?」

 そんな全員たちの言葉に、リアーヌは全員たちの見た目からその年齢を推測し、自分の年齢と照らし合わせる。
 そして自分の中の仮説を説明するために質問を口にした。

「働き出したのって十年ぐらい前?」
「あー……十六ん時だから……そうだな。 十年ぐらいにはなるな?」
「じゃあ、力の量は大して変わってないかも。 私も十年前にはもう力使ってバイトしてたから」
「……は?」
「おいおい、お嬢、冗談ならもっと面白いヤツ頼むぜ?」

 一人の全員が肩をすくめながら言うと、その言葉に船員たちがヘラリ……と笑いながら「冗談かよー」「そうだぞ!」と、口々に言い始めるーーが、リアーヌも困ったように肩をすくめながら口を開いた。

「残念ながら本当なんだなぁー? ……お菓子が欲しければ自分で働いて手に入れるというのが、うちの決まりでした」
「スパルタ……?」

 そう呟いた船員の顔が「貴族なのに……?」と言っているように見えたリアーヌは、小さく声を上げながらさらに詳しい説明を口にする。

「あ、あのね、私元は庶民なの。 それも下町って言われるような王都の端っこで暮らしてたような」
「……庶民?」
「下町って……」

 怪訝な顔つきになる船員たちに(あれ、もしかしてこの話しないほうが良かった……?)と思ったリアーヌだったが(でも隠してることじゃないし……それにアンナさんたちからも止められないから……)そう思いながら、チラリと柵の外で控えるアンナたちの反応を確認しながら口を開いた。

「うちの父さんが子爵家に入ったのは、私が十五の頃。 だからそれまでは“平民のお嬢ちゃん”だったんだー」

 リアーヌのその説明に、全員たちは顔を突き合わせ小声で意見を交わし合う。

「……え? 確か坊の婚約者って教養学科のSクラス……?」
「貴族だって難しいって……」

 漏れ聞こえてきた会話に、リアーヌは苦笑いを浮かべながらふぅーと、長く息を吐き出した。

「……まぁ、その……ーーいわゆるなので?」
「ーーいや、それでどうにかなるレベルかよ⁉︎」
「見栄だけで生きてる貴族でも無理なんだぞ⁉︎」
「そこをなんとかしてくれたんですぅー! うちの使用人たちは凄いんですから!」
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