771 / 1,038
771
しおりを挟む
その視線がリアーヌの後ろ、アンナやオリバーに向けられていることに気がついたゼクスは、肩をすくめながら二人に話を振る。
「それでリアーヌの気分が良くなるならかまいませんよね?」
「ーー外にいるほうが楽そうですからねぇ?」
「お嬢様がお望みなのでしたら……」
二人はそれぞれの言葉で異論は無いことを伝えた。
二人からの言葉にオットマーはようやく安堵したかのように大きく息をつき、甲板少し後ろの一角、柵で囲われたスペース似向かって声を張り上げた。
「おーい! 臨時の助っ人が来たぞー!」
その言葉に甲板に座り込んでいた男性たちが「おおおっ!」と、嬉しそうに歓声を上げたのだった。
「ーー今度は水平線に対して船が左に傾いただろ?」
「右から風当てる?」
「そうだ。 この傾きが無くなりゃ揺れは少なくなる」
「……っーーでも揺れるは揺れるね?」
「ははっ船だからなぁ? でかい波に乗りゃ揺れるわなぁ?」
「嬢、力使わなくても地平線は見とけよー。 いつどうやって揺れるか分かってりゃ酔いづらくなるからな」
リアーヌは風魔法での船の動かし方を教わりながら甲板に座り込み、目の前で風魔法を受け大きく膨らむ三本の大きな帆を見上げながら「ほへー……」と感心したような声を上げていた。
「……あの三本のどれに当てるとかは誰が決めるの?」
「あー……長いことやってりゃ、真ん中より前だなぁとか、もっと下からか……とか出てくるんだ。 そんな時以外は一番近い帆のど真ん中に当ててりゃ問題ねぇ。 どの帆だろうと風が当たりゃ船は進むんだ」
「そーそー! 大体、あの帆は自然の風を受けるためについてるもんだからな? 魔法で風を自由自在に当てるようじゃねーんだわ」
「ーーそっか」
船員たちの説明に納得したリアーヌは、少しの傾きを感じ、その反対方向に風魔法を当てるため、手を伸ばし風魔法を発動させた。
リアーヌや他の風魔法持ちたちの活躍により、この商船団は風一つない穏やかな海の上をスイスイと順調に進んでいくのだった。
(ーーリアーヌ覚えた! 船は運転してないと酔う! 少なくとも水平線は見てないと無理だ……これって原理は車の運転と一緒なのかなぁ? 車酔いしやすい人も自分の運転では酔わないって話、聞いたことあるけど……)
「おっと、お嬢ストップ。 ……風が出始めたがーー……まだ弱ぇなぁ?」
「これじゃ凪とたいして変わんねぇな?」
「んじゃもうちょっと当てる?」
リアーヌは渋い顔で話し合う全員たちに向かい、首を傾げる。
これには親切心も含まれていたが(中入ったらまた気持ち悪くなるかも……)という、打算も多分に含まれていた。
「それでリアーヌの気分が良くなるならかまいませんよね?」
「ーー外にいるほうが楽そうですからねぇ?」
「お嬢様がお望みなのでしたら……」
二人はそれぞれの言葉で異論は無いことを伝えた。
二人からの言葉にオットマーはようやく安堵したかのように大きく息をつき、甲板少し後ろの一角、柵で囲われたスペース似向かって声を張り上げた。
「おーい! 臨時の助っ人が来たぞー!」
その言葉に甲板に座り込んでいた男性たちが「おおおっ!」と、嬉しそうに歓声を上げたのだった。
「ーー今度は水平線に対して船が左に傾いただろ?」
「右から風当てる?」
「そうだ。 この傾きが無くなりゃ揺れは少なくなる」
「……っーーでも揺れるは揺れるね?」
「ははっ船だからなぁ? でかい波に乗りゃ揺れるわなぁ?」
「嬢、力使わなくても地平線は見とけよー。 いつどうやって揺れるか分かってりゃ酔いづらくなるからな」
リアーヌは風魔法での船の動かし方を教わりながら甲板に座り込み、目の前で風魔法を受け大きく膨らむ三本の大きな帆を見上げながら「ほへー……」と感心したような声を上げていた。
「……あの三本のどれに当てるとかは誰が決めるの?」
「あー……長いことやってりゃ、真ん中より前だなぁとか、もっと下からか……とか出てくるんだ。 そんな時以外は一番近い帆のど真ん中に当ててりゃ問題ねぇ。 どの帆だろうと風が当たりゃ船は進むんだ」
「そーそー! 大体、あの帆は自然の風を受けるためについてるもんだからな? 魔法で風を自由自在に当てるようじゃねーんだわ」
「ーーそっか」
船員たちの説明に納得したリアーヌは、少しの傾きを感じ、その反対方向に風魔法を当てるため、手を伸ばし風魔法を発動させた。
リアーヌや他の風魔法持ちたちの活躍により、この商船団は風一つない穏やかな海の上をスイスイと順調に進んでいくのだった。
(ーーリアーヌ覚えた! 船は運転してないと酔う! 少なくとも水平線は見てないと無理だ……これって原理は車の運転と一緒なのかなぁ? 車酔いしやすい人も自分の運転では酔わないって話、聞いたことあるけど……)
「おっと、お嬢ストップ。 ……風が出始めたがーー……まだ弱ぇなぁ?」
「これじゃ凪とたいして変わんねぇな?」
「んじゃもうちょっと当てる?」
リアーヌは渋い顔で話し合う全員たちに向かい、首を傾げる。
これには親切心も含まれていたが(中入ったらまた気持ち悪くなるかも……)という、打算も多分に含まれていた。
6
お気に入りに追加
372
あなたにおすすめの小説

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる