成り上がり令嬢暴走日記！

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「アンナさん……」

　リアーヌに見つめられたアンナは、的確にその意図を理解して、リアーヌの手元のメモに視線を移した。

「ーー失礼を」

　そう言いながらリアーヌが手にしていたメモに視線を走らせる。
　そしてすぐに大きく頷きながらリアーヌを安心させるように笑顔を浮かべた。

「こちらに書かれているものでしたらわ私わたくしでも見分けられるかと……」
「ーーだって！　良かったねヨッヘムさん！」
「おう！」

　嬉しそうにやり取りをしている二人に向かい、ゼクスがそっと指摘する。

「……リアーヌが見ないと練習にはならないような……？」
「……最初から騙されるのも今後のモチベーションに関わるんで」
「ーーモチベーションは大切、かな？」

　視線を逸らしながらモゴモゴと言い訳するように喋るリアーヌと、それに呆れたような笑顔を浮かべるゼクス。
　そんな二人にリエンヌがクスクスと笑いながら声をかけた。

「まずはリアーヌが見て、これってものを決めて、それからアンナさんに確認して貰えばいいのよ。　初めての練習なんだからそのぐらいがちょうどいいわ？」
「ーーなるほど。　ヨッヘムさん私頑張ってくるね！」
「おー頑張れ頑張れ！　ーーアンナさんよろしくお願いします……！」

　ヨッヘムはアンナ頼りだということを瞬時に理解したようで、リアーヌとは違う気合の入った言葉をアンナにかけていた。

「……かしこまりました。　ではこちらで……」

　そんな会話と共に別のテーブルに移ったヨッヘムたちを見送り、リアーヌは不満げに唇を尖らせる。

「……私が頑張るのに」
「……金五十は大金だからねぇ？」
「ーーちなみに今回の買い付けでスパイスとかって……？」
「それはズルすぎない？　しかもなんの練習にもならないし……」
「ちょっとぐらい……」
「ダメでーす」
「……けちんぼ」

　ボソリと呟かれた悪口に、ゼクスは大袈裟に驚いてみせると、芝居が勝った口調で返す。

「ええー？　むしろ太っ腹でしょ？　今回のことだって大きな心で許したじゃないかー」
「……それはそうですね？　ーーゼクス様の太っ腹ー！」

　楽しそうに紡がれた、ともすれば悪口のような言い方のそれに、思わず吹き出してしまったゼクスは、クスクスと笑いながら楽しそうに答える。

「ふふふっ　楽しんでこようね？」
「はい！」

（待っててね私の日本食！　……おこずかいは十分集まったと思ってる……あとはどれだけアンナさんたちの目を盗んで買い食い出来るかどうか……！）

　一人ひっそりと決意を固めるリアーヌだったが、なにかを企んでいるであろうことは、目の前のゼクスどころか、オリバーや長年家族をしている子爵夫妻にまでバレバレで、オリバーは一人（今回も大人しくしててくんねーんだろうなぁ……）と生ぬるい視線を主人に向けていたーー