成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「私も無理です……ーーだってこの間、父さんに豪運のスキル、上手く使えないんだってグチったら……「あんま考え無いて行動しろ!」って言われて……」
「うわぁ……」

 声には出さなかったが、その会話に注目していたすべての者たちが、同じようにげんなりと顔をしかめていた。

「ーーアンナさんには「豪運のギフトを練習なさる時はお家の中だけですると約束してくださいませ……!」って懇願されました。 私だって入学当時ならともかく、今は考えなしに行動するとかちょっと無理です……」
「……俺はそれを“成長”って呼ぶんだと思うな?」
「ーー豪運のギフトは上手くなりませんけどね?」
「……ゆっくりやろ? 俺の心臓も持たないって……」

 どこか哀愁を漂わせ始めた二人の会話を聞きながら、レジアンナたちをはじめとした、この会話に注目していた面々はそっと顔を突き合わせながらヒソヒソと意見を交わし合う。

「……意外に重要な情報だと思いますわ?」
「事実だとすれば大事おおごとだ……」

 レジアンナの言葉にフィリップが神妙な顔つきで頷き返す。

「ーーこちらのお話、知り合いのギフト研究家に検討していただこうかと……」
「アロイス様だね? 私も意見を聞いてみたい」
「まずは手紙を送ってみますわ」

 ビアンカの提案にパトリックが頷き、ほんの些細な時間で、研究者たちの意見を求めることが決定していた。

「……訓練次第で力が伸びるーーそれが事実であれば……」
「ーー将来が変わる人や家も多く出るかと……ーーそれをもたらしたのがレオン様ならば、きっと貴方の助けになってくださいますとも……!」
「もし事実であれば、だがな……」
「子爵様の助言付きです。 決して悪い手札ではございません!」

 こんな会話で、この情報が第二王子派閥の切り札の一枚に加えられたのだったーー

「……ーーこの方法、うちの社員たちにも教えて良いかな? 水持ちがより一層多く水を出せるなら船旅は快適になるし、万が一にも備えられる」
「構いませんけど……ーー社員さんたち使い切ってくれますかね?」
「……え?」
「だって……ギフトで雇われてる人たちって、基本的に力を使い切るの嫌がるじゃ無いですか? 使い切ってそのまま帰れるなら良いですけど、駆け込みで仕事が舞い込んで「力もつないから無理!」って言いたく無いから……」
「あー……」
「関係性によっては、言ってもどうにもならないから回復するまで残業とかも考えられますし……」
「なるほど……その危険は考慮しないとだね……ーーじゃあまずはグループ分け……いや、研修と称して力を使い切る期間を設けるか……?」
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