上 下
725 / 1,038

725

しおりを挟む
「……ま、これでかの方の周りは静かになるんじゃないかな? ……ご自慢のギフトでもは止められないようだし?」

 ゼクスは言葉をぼかしながら、ユリアの周りから取り巻きが減る可能性と、そして守護のギフトでもこの騒動から身を守ることは出来ないと、肩をすくめていた。

「……確かに」

 少し時間はかかったが、自力で翻訳したリアーヌは、扇子で口元を隠しながら肩をすくめ返した。

「そもそも……かの方の発言はあんまり受け入れられないーーあくまでも、私はだけどね?」

 ゼクスは周りの者たちが自分たちの会話を聞いていることを見越した上で、ユリアのことを快く思っていないであろう者たちの心をくすぐるような発言をする。
 こういった個人の主張が多くなれば多くなるほど、ユリアの影響力が弱まると考えていた。

「……それにしてもーーあの意外にメンタルが強い子ですね……?」

 リアーヌは少し背伸びをしながら騒ぎの中心にいるユリアたちを――そのすぐ後ろに佇んでオロオロしているベッティ・レーレンを視界に収めながら呟いた。

「……招待状が無いにも関わらずここまでやって来れる胆力の持ち主だからね……? メンタルは元から強いんじゃ無いかな?」
「そう……なんですか、ね?」

 リアーヌは曖昧に頷きながらベッティに同情的な視線を送る。

(あの子、平民だからお城のパーティに出席するなんてシナリオ見たことないし……ーーなんで連れてきたんだろう? あの子がいてくれたらレオンがどこにいるか分かるとか考えたとか……? ーーそれとも本気で彼女を排除したがってる……?)

「……気になる?」
「……あの方のこれからが心配です」
「ーーこれだけの貴族に迷惑をかけた存在、しかも分かりやすくターゲットになりやすい身の上……ーー誰も何もしなかったとしても、貴族たちからの覚えが悪くなると、不興を買うのを恐れてその周りーーお抱えの商家や職人たちが距離を取ろうとする……ーーこうなってしまったら、全力で今の関係性にしがみつくのが最善なんじゃないかな?」

 ベッティの身分が平民ということで、ゼクスもだいぶ直接的な表現で説明する。

「あの子は何も悪く無いのに……」
「――そうかな?」
「だって……友達に誘われてついてきただけなのに」
「……かなぁ?」
「――違うんです?」
「……リアーヌだったら、学校の友達――でも貴族だと知っている人にパーティーに誘われたら、なにも聞かずについてくるかい?」
「なにも聞かないってことは……」

 リアーヌはゼクスからの質問に首を傾げながら答える。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

皇妃になりたくてなったわけじゃないんですが

榎夜
恋愛
無理やり隣国の皇帝と婚約させられ結婚しました。 でも皇帝は私を放置して好きなことをしているので、私も同じことをしていいですよね?

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。

もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」 隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。 「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」 三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。 ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。 妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。 本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

処理中です...