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「ーー今日の一件が耳に入れば距離を取る者は決して少なくない。 かの方とはいえ、休み明けは“これまで通り”とはならないさ」
「……どうだか! あんな方さっさと追い出してしまえいいだけですのにっ!」
「ーーゆくゆくはね?  でもそれはじゃない」
「ーー本当ですのね?」
「ーー……おや? この私が君のお願いを無下になんて出来るわけない。 知っているだろう?」
「フィリップ様……」

 頬を染めながらクネクネと身体をくねらせる友人を横目に、リアーヌはビアンカのほうに身体を傾け、小さな声で囁いた。

「……今のセリフのどこら辺に胸キュン要素が合ったと思う?」
「ーー願いを無下にしない……辺りからかしら?」
「あー……確かにそこだけ聞くとキュンとしちゃうかも?」

(ーーその前の不穏な会話さえなければねっ⁉︎)

「……俺だって無下にしたことないと思うんだけどなー?」

 そんなやりとりを聞いていたゼクスが面白くなさそうに口を開いた。
 けれども言われた方のリアーヌはそうは考えていなかったらしく、キョトンと目を丸くしたのち、を口にした。

「ーーえ、じゃあお刺身……」
「ーーあ、そろそろ会場に戻る時間なんじゃないかな?」

 リアーヌの願いを理解したゼクスは、全力でその願いをかき消すように喋り始める。

「ものすごい無下にするじゃん……」
生物なまものはダメだって……大体、ヴァルムさんになんて言い訳するの? 聞かれたら確実にバレちゃうよ?」
「こっそり食べれば……」
「ーーおにぎりってのは探してみるから」
「……中身はツナマヨでお願いします」
「――中身がある料理なの……?」
「ツナマヨ希望です」
「……分かったよ」

 ため息混じりにゼクスが答えるのを待って、フィリップがゆったりと友人たちを見回しながら声をかける。

「ーーそちらの意見を取り入れるわけではないが……ーーそろそろ会場も落ち着いた頃合いだろう。 そろそろ挨拶回りを再開させようか?」

 そう言いながらレジアンナのそばまで来ると、フィリップは芝居がかったしぐれで手を差し出した。
「かしこまりましたわ?」と、楽しそうにクスクスと笑いながら答えるレジアンナ。
 ーーこう言った芝居がかったやりとりが、お好みの様子だった。

「……かの方への手出しは禁止だからね?」
「……ちょっとぐらい」

 そう答えたレジアンナは甘えるように、フィリップ手を揺らしながら下から覗き込む。

「……ーーちょっとだけだよ?」
「ーーはいっ!」

 フィリップの答えに嬉しそうに答えたレジアンナだったが、その周りにいるビアンカやパトリック、そしてクラリーチェやレオンまでもが、ギョッと二人に目を剥いていた。
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