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「ーー子爵様はこれ以上の影響力を望まないんじゃ無いかな?」

 リアーヌの疑問に答えたのはゼクスだった。

「……そうなんです?」
「あくまで俺の予想だけどね? でも今の状況で子爵様がそちら側に付くと明言すると、それにならう家が多々出てくるーーそうなった場合、派閥内でのパワーバランスが多少なりとも動くんだ」
「パワーバランス……」
「子爵が動いたからこそ派閥の人間が増えたなら、動かないわけがない……でもそうすると、それを嫌ったり快く思わない方々も出てきてしまう」
「……それがイヤ?」
「権力や影響力は持ちすぎると毒になる場合もあるーー子爵様はそれを嫌ったんじゃ無いかなぁ?」
「なるほど……」
「ーーまぁ、今のは全部俺が勝手にそう思ってるだけなんだけどね」
「……合ってそうですけどね?」
「ーー答え合わせも兼ねて、この後お邪魔しても?」
「あ、多分大丈夫だと……?」

 リアーヌがそう返事を返したところで、フィリップの困ったような呆れたような声がかけられた。

「わざわざ我々の前でその話をしますかね……?」
「ぁ……ごめんなさい……?」
「いや、責めているわけでは無いんだ……ーーボスハウト家の考えを知るいい機会になった。 こちらとしてはあちらに決してつかないならば味方も同然なんでね」

 フィリップのその言葉に嫌な予感を覚えたリアーヌは扇子で口元を隠しながら不本意そうに首を傾げて見せた。
 これでリアーヌがこの会話の内容を不快に感じているという意思表示になるはずだったのだがーー

「ーーつまりリアーヌはほぼ味方ですわよね⁉︎」

 それがうまく伝わらないままに、レジアンナが嬉しそうに声を上げ、喜んでいた。

「ぇ、ちが……レジアンナ」
「違いませんわ? ほぼなんて誤差みたいなものよ! つまり貴女はわわたくしの味方なの! ……だからねリアーヌ?」

 そんなレジアンナの猫撫で声に、リアーヌの背筋にはギフトで感じるものとはまた違った悪寒が走っていた。

「……なに?」
「ご一緒にはいかが?」

 無邪気でいて愛らしい笑顔で言い放ったレジアンナだったが、その恐ろしさを身をもって知っているリアーヌは、ヒクリと頬を引きつらせた。

「……レジアンナ、とても楽しそうなところ水を差したくはないんだが、手出しはいけないよ?」

 楽しげなレジアンナに待ったをかけたのはフィリップだった。

「……少しくらい」
「やめておくれ」
「ええ……」

 不本意そうに唇を尖らせるレジアンナに、フィリップは困ったように笑うと、レジアンナを宥めるように優しい口調で話しかける。
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