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 アロイスからの質問に胸を張って答えるリアーヌ。
 家族も巻き込んでお抱えの職人さんたちと作り上げたこの練乳はリアーヌの自慢だった。
 ――だったのだが、その甘さに父や弟はかき氷にかけるのを遠慮し、母もリアーヌが勧めるほどはかけてくれなかったためリアーヌはそれが不満で仕方がなかったのだ。

(練乳はこんなに美味しいのに……かき氷だからってさっぱり食べなくったって良いと思いますけどね! 食べ終わって喉乾いたら水飲めば良いだけだし! 甘味なんだから甘さこそが正義だしっ!)

「あら、今回はラッフィナート家は関係ありませんの?」

 そんなビアンカの言葉にリアーヌはギクリと肩を小さく震わせ、気まずそうな顔つきになりながら、言いにくそうに口を開いた。

「……こんなのが欲しーって言ったのが家だったから……」

(作ってた時は楽しかったけど、出来上がってからゼクスのことを思い出してちょっとだけ後悔したよねー……遅かったけどー)

「あらま……平気だった?」
「まぁ……? カフェで使う分は優先的に卸してもらうってことで一応の納得を……? まぁ、お抱えさん含めてラッフィナート商会で売り出す分に関してのお話し合いは進んでるみたいだけど……」
「……それはつまり、ラッフィナート男爵家経由でラッフィナート商会に流すって話かしら?」
「うん。 男爵家、赤字経営が続いてるから……」
「……そりゃあね? これで黒字だったら大変よ……?」

 ラッフィナート商会の力を、財力を減らしたくて叙爵を促す動きがあったことを知らない貴族はいない。
 そしてその足がかりとしてゼクスが男爵の地位につき、軍路を引く任についたことも――
 おおかたの予想は、これでラッフィナート商会も財力を大幅に削がれたことだろうーーというものだったが、蓋を開けてみれば独自のノウハウや伝手を使い、工事の費用はだいぶ安く上がっていて、独自の褒賞品を作ることで、その仕事を手伝う労働者たちからの評判も高かった。
 そして何より、与えられた領地の特産物や新しく作った特産品を王都に持ち込み、流行すら流して見せたラッフィナート商会の――ゼクスの手腕に多くのものたちが度肝を抜抜かれ、より一層の警戒を見せていた――

「……黒字だってそれなりに苦労するみたいだから、同じ苦労なら黒字でしたい……」

 リアーヌは両親たちのグチのような会話を思い出し、どうせ大変なら借金が無い方がいいと訴えた。

「……苦労の質は変わるでしょうけれど……」

 これで黒字に返してしまえば多くの貴族からの警戒と不興を買うのだということを全く理解していないリアーヌに、ビアンカは苦笑を浮かべながら肩をすくめた。
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