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「……私はたくさん汗かいてデトッスクスしたいですけど」
「デトッスク……」

 聞きなれない単語にゼクスが再びハンターの目つきになが、一瞬で引っ込めるとにこやかな笑顔をリアーヌに向けながらたずねる。

「デトッスクについて詳しく教えて? みんなが喜んでくれそうならサウナも作ろうね?」
「えっと……サウナに入って血行が良くなると身体の中の老廃物を外に送り出す機能の働きが強くなるんです」
「老廃物……」

 ゼクスは再び、メモ帳に素早く書き付けながらリアーヌの説明に耳を傾ける。

「その……母さんやお婆さまが言ってたんですけど、貴族の女性って本当に汗かかないらしいんですよ」
「まぁ……そりゃあね? 貴族だし……?」
「――でも汗かかないのって身体に悪いんですよ?」
「……そうなの?」
「はい。 汗かかないと肌の保湿だって出来ませんし、血行が悪くて汗かかないなら老廃物が身体の中に溜まって吹き出物ができちゃいますし……それに――」

 そこまで言ってリアーヌは迷うように周りに視線を走らせると、言いづらそうな声で「あくまで一般論ですからね?」と、前置きをする。

「……年齢を重ねた香りと言いますか、その……皮脂臭のようなものがですね?」

 リアーヌは極力“加齢臭”という言葉を使わないようにしながら説明をしていく――心の中で(母さんはともかく、大奥様の名前まで出さなきゃ良かった……!)と後悔しながら。

 その努力が実ったのか、たいして言葉を濁せていなかったのか、ゼクスをはじめとした全員がリアーヌの言いたいことを理解して、そっと視線を逸らしあっていた。

「汗をかくと解消される?」
「あー……男性の場合の加齢臭は食べ物やタバコなんかも原因なんで一概にはいえませんけど、首の後ろや耳の裏とかを綺麗にしておけば、多少の改善はされると思います」
「――首の後ろや耳の後ろね……」

 ゼクスが真剣な表情で書き付けているのを横目に、レジアンナがおずおずと口を開いた。

「……どの程度汗をかけば、その――排出されるものなんですの?」
「私もそこまで詳しくはないけど……――汗かいてみて肌や身体の調子が良くなるんなら老廃物がまだ溜まってるってことなんじゃない? でも老廃物って毎日溜まり続けるものだから、どれだけやってもゼロにはならない気がする……」
「毎日……」

 自分の答えで絶望的な表情を浮かべてしまったレジアンナに、リアーヌは慌てて言葉を付け加える。

「あー! でも大人になってもダンスのレッスン続けるなら平気じゃない? それにレジアンナは作ってもらおと思ったらサウナも作ってもらえるでしょ?」
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