成り上がり令嬢暴走日記！

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「……もしかして想定してなかった？」
「はい……」

　リアーヌは気まずそうにそう頷きながら、チラリと友人たちに視線を走らせ、そのどこか期待しているかのような顔つきを確認すると観念したように大きく息をついた。

（うん。　これは確実に来店される顔だわ……レジアンナ、ついさっきスパ持ち雇う！　って言ってたんだからこの店必要ない気がするけど……――新しくできた店に行ったことならしいですわよ？　なんて謗そしりも受けたくないのかな……？　ゼクスが手掛ける以上ある程度の知名度は高くなるし……）

「ーーそうなると、完全個室がいくつも必要になりますかね？」
「……逆にみんな一緒のお風呂に入れようとしてたんだね……？」
「……普通の人たちはそのぐらいの料金設定がありがたいと思いますけど……？」

（それにどーん！　と大きいお風呂気持ちいいじゃん。　ちょっと人目は気になるけど、湯船に浸かっちゃえばそこまで気にならないよ！）

「ランク付けかぁ……――好きそうな層は一定数いそうだな……それに無茶な貸切要望も防げそうだ」

（ーーあー……お風呂だもんねぇ？　侍女以外に見せるのイヤよ⁉︎　とか、娘の裸を見られた⁉︎　とかいうトラブルが起きてしまいそう……）

「……貴族の人たちは、薄くて透けにくい素材の服、着てお風呂に入ってもらうようにしましょうね……？　個室借りてたのに裸を見られた⁉︎　もしくは見られるところだった！　なんて話が出てしまったら未婚の女性が来られなくなります……」
「――早急に準備しよう」

　リアーヌの提案に神妙な面持ちで力強く頷くゼクス。
　男性優位の世界とはいえ、家系を支えているのは女性。
　尚且つターゲットの主な層も女性。
　――にも関わらず、そんなウワサが出回ってしまえば貴族の足は一斉に遠のいてしまう……多くの金を落とすであろうその層を失うような行為はゼクスの中の商人魂が許さなかった。

「あ、あと……個人的にサウナが欲しいんです」

　そんなリアーヌの提案にゼクスは困ったように眉を寄せた。

「サウナは……あんまり若い女性が楽しむものじゃない気がするけど……？」

　――ゼクスの中の常識として、サウナは男性の社交場の一つだった。
　シガークラブやカジノ、そして数々の会員制クラブと並び、男性のための社交場であると多くの人々に認識されているのがゼクスの知るサウナだった。
　ーーしかしそれらの情報はゲームのシナリオで一切触れられたことの無いものだったので当然リアーヌが知ることは無く、そんなゼクスの答えにキョトンとしながら自分の考えを口にした。