成り上がり令嬢暴走日記！

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「……詳しく聞いていたはずでは……？」
「――聞いていなかったから今があるんでしょうねぇ……？」

　ビアンカはそう答えながら、同じく“詳しいことはなにも話していなかった”パトリックに意味ありげな視線を送った。

　――ことの始まりは、クラリーチェが落ち着きを取り戻し、レジアンナが茶会の再会させたことだった。
　レジアンナもクラリーチェも婚約者の意向に従わず、自分の友達でいてくれるのだ！　と理解したリアーヌ、それに加え（今日ここに集まってる人たちは事情を把握してる人！）と言う認識を持っていたため、なんの躊躇もなくあの日のことを茶会での話題提供としてペロリとしゃべってしまったのだがーー
　しかし、フィリップたちはクラリーチェにもレジアンナにも、そこまで詳しい話をしていたわけでは無かったため、すぐさま「ちょっと待って下さい⁉︎」「そんな話聞いてないんだけど⁉︎」となってしまい、リアーヌは首を傾げながらたずねられるがままに、あの日の出来事を説明していった。
　それを聞いた二人は、説明されていた事情とのギャップ、そしてリアーヌに対してのあまりにもな対応に「なにそれ⁉︎」「酷すぎる⁉︎」と怒りをあらわにしたのだった。

（……でも私自身、あの対応には腹たってたから二人がこんなに怒ってくれてなんか嬉しいかも……？）

「……私ウソなんて言ってないのにウソつき扱いされたの」
「まぁ！　言いがかりだわ⁉︎」
「なんて可哀想なリアーヌ！」

　レジアンナたちが完全に自分の味方なのだと理解したリアーヌは親に言いつける子供のように喋り続ける。

「みんなに囲まれて口を塞がれたの。　……怖かった」
「なんてことを⁉︎」
「……どういうことですの？」

　興奮し、顔を赤く染めながら怒りをあらわにするクラリーチェと、感情をごっそりと削ぎ落としたレジアンナが、真顔でフィリップに詰め寄る。
　壁際の使用人たちの息を呑む気配もそこかしこから感じられた。

「じ、事情がだな……？」
「誤解だよ⁉︎」

　二人とも自分の婚約者にタジタジになりながら弁解を口にする。
　リアーヌはそんな二人の姿に少々意地の悪い満足感を覚えていた。

「……ま、立場のある殿方がレディに対して取る行為でないことだけは確かね？」

　肩をすくめながら紅茶を口には運ぶビアンカの言葉に、リアーヌはようやくビアンカやレジアンナたちに感じていた疑いを払拭することができたのだった。

「ーーだよね？　めっちゃ怖かったもん」

　そう答えたリアーヌの言葉にさらにヒートアップした二人に促され、フィリップをはじめとした男性陣たちがリアーヌへの謝罪を口にする。