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 リアーヌはビアンカへ向けた疑惑よりさらに一段階強い疑いをレジアンナとクラリーチェに持っていた。
 さらに言うならば、二人の性格や立場上、婚約者の意思に反してまで自分なんかとは仲良くはしないだろう……とも、考えていた。

「……私たち、もう友達じゃなくなっちゃった?」

 クラスではとなっているこの話題にまともに触れられず、ヤキモキしていたレジアンナだったが、自分の言葉にあからさまな壁を感じ取り、ショボン……と大きく肩を落とした。

「だって……レジアンナはフィリップ様の婚約者だし……」

 今にも泣き出しそうなレジアンナに、リアーヌはモゴモゴと言い訳するように言葉を紡いだ。
 そんなリアーヌたちの会話にそっと口を挟んだのはゼクスだった。

「――今後の対人関係はリアーヌの希望通りにするって言われただろう?」
「言われはしましたけど……」
「それはつまり、リアーヌがどうしたいのか、が最優先されるってことだよ。 リアーヌがレジアンナ嬢と友達を続けたいなら、その気持ちが優先される。 ――こう言っちゃなんだけど……それによってレジアンナ嬢が板挟みの立場になってしまったとしても……それはあちらの問題だ……君が考慮するような話じゃない」
「ーー公爵家と侯爵家……」

 明らかな上位の家柄なんですけど……? と訴えるようにゼクスを見つめるリアーヌ。
 そんな視線を受けながら、ゼクスはクスリと笑いながら主張を続ける。

「……この場合は、加害者と被害者。 そして加害者の婚約者の友人……かな?」

 この言葉には、ミストラル侯爵家との繋がりやレジアンナを通してのパラディール家との繋がりを手放したくないーーという、ゼクスやラッフィナート家の思惑も大いに関係していたが、ゼクスのリアーヌに対する思いやりも少なからず含まれていた。

 ――ボスハウト家自体が、リアーヌが思っているほどヤワではないのだ。
 陛下の覚えもめでたく、子爵たちの立ち振る舞いさえクリアされれば陞爵しょうしやくも視野に入るほどその力や発言力を増している家だ。

 ――リアーヌが妙な気をまわさず、一言「これからも友達でいたい」と言えば、間違いなく友人としてあり続けられるーーその爵位に関わらず……
 ゼクスはそれを理解していたからこそ、リアーヌの背中を押してその言葉を引き出そうとしているのだった。

「……フィリップ様の悪口……イジワル言っても怒らない?」

 なにもごまかしきれていない発言だったが、レジアンナは気にも止めずに大きく頷き返す。

「今の貴女ならば当然だわ?」
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