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「……本当にこれからも友達……?」

 リアーヌはサロン棟へ続く廊下を歩きながら、ビアンカに再度確認していた。

 ――先日の一件、もしかしたらビアンカはなにも知らなかった訳ではなく、事情を知りながらフィリップたちに協力し、自分を閉じ込めさせたのでは……という思いが拭いきれなかったのだ。

(だってビアンカは生粋のお嬢様だし……貴族にとって派閥って大事だし……――そもそもいざとなったら私を切り捨てるって何回か普通に言われてるしなぁ……)

「もちろんだって何度も言ってるでしょう? ――貴女が私を疑う気持ちも分かるけれど……私だって婚約者に利用された被害者ですのよ?」
「……それは可哀想」
「――まぁ? 結婚相手がこちらに負い目を感じてくださっているこの状況は……悪くはないのですけれどね?」
「――一気いっきに黒幕説まで出てきたな……?」

 しれっと答えるビアンカに半眼で返すリアーヌ。

「失礼ね。 私も被害者だっていってるでしょ」
「だって……」

 そう言いながら唇を尖らせるリアーヌの背後から、クスクスという笑い声と共にゼクスが声をかけた。

「そもそもリアーヌ、ビアンカ嬢と本気で友達やめるつもり無いだろ?」
「それは……」

 その言葉に口ごもるリアーヌに、ゼクスはビアンカと視線を合わせると困ったように笑いながら肩をすくめ合った。

(なんでそんなに余裕でいられるのかと……ーーそもそもなんで今回のフィリップ主催のお茶会、不参加にしてくれなかったのかとっ!)

「……本気で毒殺されるかもしれない……」
「……もしかして今から行くお茶会の話してる?」
「だってわざわざ呼び出されて……」
「……そもそもんだよ? だったら関係性も全てこれまで通りさ、そうだろ?」
「それは……」

 そう答えながらも、リアーヌは口の中でモゴモゴと「そうなんですけどそうじゃ無いっていうか……」と、反論の言葉を転がしていた。

 リアーヌがこれだけフィリップを――パラディール家を恐れているのには訳があった。
 ――先日の一件、全くと言っていいほどにウワサ話の一つにもならなかったのだ。
 これはフィリップがゼクスやボスハウト家との約束を守っただけ、とも言えるのだが、リアーヌはそうは考えてはいなかった。

(だってこの学園だよ⁉︎ しかも教養学科だよ⁉︎ お付きの人たちや護衛に職員に生徒! これだけの目がある中、衆人環視の元、教室から呼び出された私のウワサがなに一つないって! 大体、違うって分かってても『実はそうだったんじゃ無い……?』とかいう意地悪言われることなんかザラなのに、それすら無いとかっ)
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