648 / 1,038
648
しおりを挟む
◇
「……本当にこれからも友達……?」
リアーヌはサロン棟へ続く廊下を歩きながら、ビアンカに再度確認していた。
――先日の一件、もしかしたらビアンカはなにも知らなかった訳ではなく、事情を知りながらフィリップたちに協力し、自分を閉じ込めさせたのでは……という思いが拭いきれなかったのだ。
(だってビアンカは生粋のお嬢様だし……貴族にとって派閥って大事だし……――そもそもいざとなったら私を切り捨てるって何回か普通に言われてるしなぁ……)
「もちろんだって何度も言ってるでしょう? ――貴女が私を疑う気持ちも分かるけれど……私だって婚約者に利用された被害者ですのよ?」
「……それは可哀想」
「――まぁ? 結婚相手がこちらに負い目を感じてくださっているこの状況は……悪くはないのですけれどね?」
「――一気に黒幕説まで出てきたな……?」
しれっと答えるビアンカに半眼で返すリアーヌ。
「失礼ね。 私も被害者だっていってるでしょ」
「だって……」
そう言いながら唇を尖らせるリアーヌの背後から、クスクスという笑い声と共にゼクスが声をかけた。
「そもそもリアーヌ、ビアンカ嬢と本気で友達やめるつもり無いだろ?」
「それは……」
その言葉に口ごもるリアーヌに、ゼクスはビアンカと視線を合わせると困ったように笑いながら肩をすくめ合った。
(なんでそんなに余裕でいられるのかと……ーーそもそもなんで今回のフィリップ主催のお茶会、不参加にしてくれなかったのかとっ!)
「……本気で毒殺されるかもしれない……」
「……もしかして今から行くお茶会の話してる?」
「だってわざわざ呼び出されて……」
「……そもそもなにも無かったんだよ? だったら関係性も全てこれまで通りさ、そうだろ?」
「それは……」
そう答えながらも、リアーヌは口の中でモゴモゴと「そうなんですけどそうじゃ無いっていうか……」と、反論の言葉を転がしていた。
リアーヌがこれだけフィリップを――パラディール家を恐れているのには訳があった。
――先日の一件、全くと言っていいほどにウワサ話の一つにもならなかったのだ。
これはフィリップがゼクスやボスハウト家との約束を守っただけ、とも言えるのだが、リアーヌはそうは考えてはいなかった。
(だってこの学園だよ⁉︎ しかも教養学科だよ⁉︎ お付きの人たちや護衛に職員に生徒! これだけの目がある中、衆人環視の元、教室から呼び出された私のウワサがなに一つないって! 大体、違うって分かってても『実はそうだったんじゃ無い……?』とかいう意地悪言われることなんかザラなのに、それすら無いとかっ)
「……本当にこれからも友達……?」
リアーヌはサロン棟へ続く廊下を歩きながら、ビアンカに再度確認していた。
――先日の一件、もしかしたらビアンカはなにも知らなかった訳ではなく、事情を知りながらフィリップたちに協力し、自分を閉じ込めさせたのでは……という思いが拭いきれなかったのだ。
(だってビアンカは生粋のお嬢様だし……貴族にとって派閥って大事だし……――そもそもいざとなったら私を切り捨てるって何回か普通に言われてるしなぁ……)
「もちろんだって何度も言ってるでしょう? ――貴女が私を疑う気持ちも分かるけれど……私だって婚約者に利用された被害者ですのよ?」
「……それは可哀想」
「――まぁ? 結婚相手がこちらに負い目を感じてくださっているこの状況は……悪くはないのですけれどね?」
「――一気に黒幕説まで出てきたな……?」
しれっと答えるビアンカに半眼で返すリアーヌ。
「失礼ね。 私も被害者だっていってるでしょ」
「だって……」
そう言いながら唇を尖らせるリアーヌの背後から、クスクスという笑い声と共にゼクスが声をかけた。
「そもそもリアーヌ、ビアンカ嬢と本気で友達やめるつもり無いだろ?」
「それは……」
その言葉に口ごもるリアーヌに、ゼクスはビアンカと視線を合わせると困ったように笑いながら肩をすくめ合った。
(なんでそんなに余裕でいられるのかと……ーーそもそもなんで今回のフィリップ主催のお茶会、不参加にしてくれなかったのかとっ!)
「……本気で毒殺されるかもしれない……」
「……もしかして今から行くお茶会の話してる?」
「だってわざわざ呼び出されて……」
「……そもそもなにも無かったんだよ? だったら関係性も全てこれまで通りさ、そうだろ?」
「それは……」
そう答えながらも、リアーヌは口の中でモゴモゴと「そうなんですけどそうじゃ無いっていうか……」と、反論の言葉を転がしていた。
リアーヌがこれだけフィリップを――パラディール家を恐れているのには訳があった。
――先日の一件、全くと言っていいほどにウワサ話の一つにもならなかったのだ。
これはフィリップがゼクスやボスハウト家との約束を守っただけ、とも言えるのだが、リアーヌはそうは考えてはいなかった。
(だってこの学園だよ⁉︎ しかも教養学科だよ⁉︎ お付きの人たちや護衛に職員に生徒! これだけの目がある中、衆人環視の元、教室から呼び出された私のウワサがなに一つないって! 大体、違うって分かってても『実はそうだったんじゃ無い……?』とかいう意地悪言われることなんかザラなのに、それすら無いとかっ)
0
お気に入りに追加
344
あなたにおすすめの小説
叶えられた前世の願い
レクフル
ファンタジー
「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!
枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」
そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。
「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」
「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」
外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる