成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「――ゾワですか⁉︎」
「それはダメな合図ですね⁉︎」
「絶対に口にしてはいけません!」

 その勢いに押されるように身体をソファーへ沈み込ませたリアーヌはそのままの体制でなんどもコクコクと頷く。

「……わ、分かりました」

(私なんかよりも、メイドさんのほうが私の直感力を熟知している件について……)

「……場所を変えてなら教えてもらえる……?」
「えっと……」

 ゼクスが少し拗ねたようにリアーヌにたずねた。
 その質問に戸惑うリアーヌ。
 いまだに自分からは、スキルを上手く扱えない様子だった。

「――例えば馬車の中ではどうでしょう?」

 今度はコリアンナがリアーヌにたずねた。

「……平気、そう?」

 その質問に首を傾げながら答えるリアーヌ。
 本当にこんなことで決めて良いんだろうか……と少しだけ不安になり始めていた。

「――ではお家で旦那様や奥様と一緒に聞いていただくのは?」

 しかし、コリアンナからのその質問を聞いた時、初めての感覚に襲われ、リアーヌは少しだけ自分の直感を信じてみよう見ようという気になっていた。

「――今ふわってしました!」
「まぁ!」
「素晴らしいですわお嬢様!」

(――初めてのふわっ、を感じ取った!
――私の直感力、意外に出来る子かもしれない⁉︎) 

「――ではそれでよろしいでしょうか?」

 満面の笑顔で喜ぶリアーヌに微笑みを返してから、カチヤはゼクスにそっとたずねた。

「お邪魔させていただきますーーというわけですので、我々はそろそろ……」

 カチヤに答えてから、ゼクスはフィリップに視線を向け、退席する旨を伝えた。

「――そうですか。 ……今回の一件、リアーヌ嬢のウワサ話は人々の口に登ることはないとパラディールの名に誓う――」
「……少しでもオレの耳に入ったら街中で先ほどのお話が、面白おかしく人々の口に登ると覚悟してください」

 ゼクスは「リアーヌの名誉に少しでも傷をつけたら、お前たちの外聞にも決して少なくはない傷をつけてやるからな」という脅しをかける。
 ーー国中に販路を、店舗を持つラッフィナート商会の時期頭取であるゼクス。
 そんな相手からのこの脅しは、下手な貴族からの脅しよりも効果が高かった。

「――肝に銘じよう」
「――貸しも二つ程度覚悟しておいてください?」
「……治癒とメッセンジャーなんてどうだろう?」

 フィリップからの提案にゼクスは軽く目を見開くが、すぐさまニコリと笑い、その驚愕を取り繕う。
 ――明らかにフィリップ側の落ち度ではあったが、こんなに簡単に条件を提示してくるとは思わなかった。
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