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その言葉にピクリと反応を見せたパトリックたちだったが、互いに視線を交わし合い無言を貫く。
そんな友人たちの様子に気がついていたフィリップは、困ったように肩をすくめながら冗談めかして答えた。
「ボスハウトもうちも王家に連なる血だから、親戚といえば親戚なんだけど……ーー彼女は市井育ちだからねぇ? そうなると根本とする常識が我々とは違ってしまうのだろうねぇ?」
その言葉でレオンは自分の失言に気がつき、キュッと唇を噛み締める。
そして大きくため息をつきながらフィリップに視線を向けた。
「……ーー本当に本物なのか?」
これは、ボスハウト家のご令嬢としてのリアーヌも、自分の“再従兄弟”としてのリアーヌも、どちらとも疑った発言だった。
レオンの常識の中で、あの状況であのような暴挙に出るご令嬢など存在しなかったのだ。
彼女は偽物であり、本物のリアーヌのために自分を排除しようと動いたのだーーと説明されたほうがまだ納得できた。
ーーそしてその気持ちが大いにわかってしまうフィリップも、苦笑を浮かべながら肩をすくめた。
「……おそらくは? うちの者でも、証拠らしい証拠は掴めなかった……ーーけれど、陛下の態度こそが証拠になりえると考えているよ」
「陛下か……」
「ああ。 誰の目から見ても、陛下は今のボスハウト一家に格別の配慮を見せているーーまぁ、今まで優遇してやれなかった罪滅ぼしといえば納得してしまえるほどのものだけれど……ーーそれでも配慮していることは事実だ」
「……それすらもフェイクということは?」
「……そのフェイクでオリバー殿を――王家にしか傅かない者たちを下げ渡すとは……ましてやまだ若いとはいえ、陛下の侍従……そこまでする必要はないと思っているよ」
「……どう思う?」
レオンは後ろに控えるエーゴンにーーオリバーと同じく、王家にしか傅かない者たちの一人に意見を求めた。
「ーー主人を陛下と定めているならば、監視という可能性もありますが……」
「……なんだ?」
「どちらにしろこれ以上探ることは得策ではないかと愚考いたします」
このエーゴンの意見が正しくとも間違いであろうとも、それを明らかにすることを陛下もボスハウト家とも良しとはしない。
これ以上踏み込むということは最低でも陛下の考えを蔑ろにする行為であり、そして……正真正銘リアーヌがレオンの再従兄弟であり、オリバーがボスハウト家に忠誠を誓っているのであれば、陛下の考えを蔑ろにした上、ボスハウト家を――ボスハウト家の使用人たちを敵に回すということに他ならなかったーー
そんな友人たちの様子に気がついていたフィリップは、困ったように肩をすくめながら冗談めかして答えた。
「ボスハウトもうちも王家に連なる血だから、親戚といえば親戚なんだけど……ーー彼女は市井育ちだからねぇ? そうなると根本とする常識が我々とは違ってしまうのだろうねぇ?」
その言葉でレオンは自分の失言に気がつき、キュッと唇を噛み締める。
そして大きくため息をつきながらフィリップに視線を向けた。
「……ーー本当に本物なのか?」
これは、ボスハウト家のご令嬢としてのリアーヌも、自分の“再従兄弟”としてのリアーヌも、どちらとも疑った発言だった。
レオンの常識の中で、あの状況であのような暴挙に出るご令嬢など存在しなかったのだ。
彼女は偽物であり、本物のリアーヌのために自分を排除しようと動いたのだーーと説明されたほうがまだ納得できた。
ーーそしてその気持ちが大いにわかってしまうフィリップも、苦笑を浮かべながら肩をすくめた。
「……おそらくは? うちの者でも、証拠らしい証拠は掴めなかった……ーーけれど、陛下の態度こそが証拠になりえると考えているよ」
「陛下か……」
「ああ。 誰の目から見ても、陛下は今のボスハウト一家に格別の配慮を見せているーーまぁ、今まで優遇してやれなかった罪滅ぼしといえば納得してしまえるほどのものだけれど……ーーそれでも配慮していることは事実だ」
「……それすらもフェイクということは?」
「……そのフェイクでオリバー殿を――王家にしか傅かない者たちを下げ渡すとは……ましてやまだ若いとはいえ、陛下の侍従……そこまでする必要はないと思っているよ」
「……どう思う?」
レオンは後ろに控えるエーゴンにーーオリバーと同じく、王家にしか傅かない者たちの一人に意見を求めた。
「ーー主人を陛下と定めているならば、監視という可能性もありますが……」
「……なんだ?」
「どちらにしろこれ以上探ることは得策ではないかと愚考いたします」
このエーゴンの意見が正しくとも間違いであろうとも、それを明らかにすることを陛下もボスハウト家とも良しとはしない。
これ以上踏み込むということは最低でも陛下の考えを蔑ろにする行為であり、そして……正真正銘リアーヌがレオンの再従兄弟であり、オリバーがボスハウト家に忠誠を誓っているのであれば、陛下の考えを蔑ろにした上、ボスハウト家を――ボスハウト家の使用人たちを敵に回すということに他ならなかったーー
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