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「……すまなかった」

 レオンは少し立ち位置を変え、リアーヌから見える位置に立つと、スッと頭を下げた。
 多少のやげやり感があり、エーゴンはリアーヌを噛み付かんばかりに睨みつけていたりもしたが、一応の体裁を繕った謝罪であった。

(……せめて、申し訳ございませんでした、な気はするけど……ーーコイツまじ王子だしな……――目ぇつけられたってヤだし……)

「……まぁ、よろしいんじゃなくて?」

 ーーリアーヌは正真正銘、ここで手打ちにするつもりで、その言葉を口にしたのだが……
 この場合のこの言葉は、あまり適切なものでは無かった。

「……リアーヌ嬢、今はフォロー役がいないんだ。 発言には気をつかって欲しい」

 キュッと眉に力を入れたフィリップが不機嫌であることを隠そうともせずに言い、エーゴンに至ってはリアーヌに殺意すら向けているかの形相だった。

(……なんで⁉︎ もういいよって言ったじゃん⁉︎ 私なにをどこで間違えたの⁉︎ ――マズいんじゃない? 流石に未来の王様であろう人を本気で怒らせるのは、ものすごくマズいんじゃない⁉︎)

 そう考えたリアーヌは動揺する気持ちをひた隠しながら、レオンに向き直り、スカートの裾を持ちながら、レッスン通りの美しい所作で頭を下げた。

「ーー申し訳ございませんでした。 レオンハルト王子殿下、フィリップ様……ーーエーゴン様」

 その言葉に部屋の中にいた者たちが息を呑む。
 
 リアーヌは王家に睨まれると不味いと思い、口にした謝罪の言葉だったが、フィリップたちからすれば盛大な皮肉の言葉となっていた。
 ーーそもそもご令嬢を騙して閉じ込めているのはフィリップたちであり、リアーヌは哀れな被害者でしかない。
 そして、そうなった疑惑も自分たちの勘違い。
 それに対する謝罪を申し出たのはレオンから……ーーにも関わらず、今度はリアーヌに対して「口の聞き方を……」と注意をする……――これらの行為全てを当てこすられ、言外に非難されているも同等の言葉だったのだ……ーー言葉の裏を読み慣れているフィリップたちからすれば……

(……なに? 発言に気を使えって言われたから気を使ってるのに、なんだか私がまたやらかしたみたいな空気にされている……――ビアンカ助けて! 私もうどうしたらいいのか分かんないっ!)
 
 混乱し、少し涙をにじませながら相手の出方を伺うリアーヌだったが……

(……あれ? なんか……みんなあんまりわたしのほうをみていないような……? ――これはチャンスなのでは⁉︎)

 視線を交わし合い、自分たちの非道と、リアーヌへの対応を協議しているフィリップたちを見つめ、ゴクリと唾を飲み込む。
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