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 そんなしみじみとしたザームの言葉に、リアーヌは目を釣り上げながら反論する。

「はぁー? そんな風に言われるほどじゃありませんけどー⁉︎」

 なんなら、クラスメイトたちと比べれば、自分は運動ができるほうである。 という自信すら持っていた。

「……よく色んなところで足ぶつけたり壁に激突してんじゃん」
「あ、あれは……人とか物とかを避けた先に壁や障害物があるからで……」

 身に覚えのある事実を突きつけられ、リアーヌはモゴモゴと言葉を濁しながら反論する。

「扉に袖やスカート挟んだりひっかけたりしてんじゃん」
「……だって、あんなにピラピラしてるから……」

 言いながら肩を落としてしまったリアーヌ。
 そんな姉の姿を見つめ、ザームは淡々と自分の考えを伝えた。

「――無理だろ」
「……そんな気はしてる」

 リアーヌはしばらく考えを巡らせた結果“鈍臭い”という不名誉な形容詞を受け入れることにしたようだった。
 
「……つきましてはお嬢様」

 話が終わったところで、オリバーが頭を下げながら話しかけた。

「え、はい……?」
「こちらの訓練に同行することが決まりましたので、その間はカチヤとコリアンナの二名をお連れください」
「……え、ザーム一年なのにいいんです……?」

 首を傾げながらたずねるリアーヌに答えたのはザームだった。

「なんか騎士科でも、外の時は良いらしい」
「へぇー……」

(……まぁ、確かに「学校行事なんだから平気でしょ!」とか言って護衛無しで、簡単に誘拐や暗殺されてたら大問題だもんね……――それに男だろうが命が無事だって目立つところに大きな傷や怪我をするのは外聞がよく無いし……)

「そういうわけでございます。 その三日間はくれぐれもカチヤたちの側を離れませんよう」
「はーい。 ……でも一年の頃は一人でしたし、そこまで心配しなくても……」
「ーーくれぐれもそばを離れませんように」
「……はい」

(……なんか最近、オリバーさんの圧かけがヴァルムさんに似てきている気がする……)

 ――オリバーがここまで注意を促すくらいにはあの学園は危険であり、そして安全な場所でもあったーー

 不審者や不審物は見かけない日は無いほどに多く、そしてそれら全ては学園を守る警備部の者たちによって発見され、拘束、無効化されていた。

 ーーしかし、護衛を持てる二年以上になってしまうと、その警備部からの守りが多少薄くなってしまう。
 多くの護衛やお付きが出入りするので、警備部の者たちが把握しきれない、拘束することに躊躇ってしまうーーという場面が多発するためだ。
 それに加え……今年は王子の入学ーーさらには未来の王族となる女生徒が入学しているーー
 ……二学年以上の生徒に対する警備が薄くなることは、容易に想像がついたのだったーー
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