615 / 1,038
615
しおりを挟む
前代未聞の、教養学科の女生徒たちによる集団ボイコット事件は、偶然にも集団で気分を悪くしてしまった生徒たちが大事を取り、午後の授業を休んだだけーーということで、今後は取り扱われることに決まったのだったが、その情報を真実と受け取る生徒の方が少数であり、ましてや教師ともなれば真実を知らないものは皆無であった。
ーーけれど、このような処置が行われたのには、彼女たちの置かれた立場や今年になって現れた女生徒や婚約者との関係性が考慮された結果なのかも知れない。
「まったく! そのように制服を泥で汚すなど前代未聞ですっ! どうなさるおつもりですの⁉︎」
「……染み抜きは得意です……?」
リアーヌは、想定していた以外の質問を受け、戸惑いながらもそっと答えを口にした。
「ーーそんな話ではございませんことよ⁉︎」
「はいっ! すみませんっ‼︎」
リアーヌとしては至って真面目な返答だったのだが、そんなやりとりを聞いていた友人たち、そしてそれを見守っていた護衛やお付きの者たちの一部からクスクスという忍び笑いが聞こえてくる。
(……絶対オリバーさんも笑ってるもん……こういう時、あの人は率先して笑うんだもん……ーーっていうか! この配置本当におかしい! なんで一緒に遊んでたのに、他のみんなは私の後に控えてて、私一人が先生の前に立ってお叱りを一身に受け続けているわけっ⁉︎」
「ーーとはいえ……ーー諸々の事情を考慮し、今回は口頭注意に留めます。 ですが、今後はこのようなことがないように!」
「はいっ!」
リアーヌの返事に大きく鼻を鳴らした教師は、その後ろに控える生徒たちを見回し大きく深呼吸したのち、声をかけた。
「――皆様もよろしいですね?」
「ーーはい先生」
ーーさすがのお嬢様がた、その返事や立ち振る舞いに文句のつけようも無かった。
……その靴の所々、そして制服のあちこちには泥が跳ねているようだったがーー
教師からの注意を聞き終わり廊下に出ると、各家のお付きたちが各々のお嬢様を出迎え、そして思いおもいに労いの言葉をかけた。
それはオリバーも例外ではなく困ったように笑いながらリアーヌに話しかける。
「ずいぶんな大冒険をされたご様子ですね?」
「えへへ……?」
(……ーーまぁ、イヤイヤ付いていった割には、ノリノリで楽しんだ自覚はありますよねー……)
そして、そんなふうに考えている者たちは意外に大井のようで、そこかしこからじぶんのぶゆつ自分の武勇伝をお付きにきかせているお嬢様がたの姿があった。
ーーけれど、このような処置が行われたのには、彼女たちの置かれた立場や今年になって現れた女生徒や婚約者との関係性が考慮された結果なのかも知れない。
「まったく! そのように制服を泥で汚すなど前代未聞ですっ! どうなさるおつもりですの⁉︎」
「……染み抜きは得意です……?」
リアーヌは、想定していた以外の質問を受け、戸惑いながらもそっと答えを口にした。
「ーーそんな話ではございませんことよ⁉︎」
「はいっ! すみませんっ‼︎」
リアーヌとしては至って真面目な返答だったのだが、そんなやりとりを聞いていた友人たち、そしてそれを見守っていた護衛やお付きの者たちの一部からクスクスという忍び笑いが聞こえてくる。
(……絶対オリバーさんも笑ってるもん……こういう時、あの人は率先して笑うんだもん……ーーっていうか! この配置本当におかしい! なんで一緒に遊んでたのに、他のみんなは私の後に控えてて、私一人が先生の前に立ってお叱りを一身に受け続けているわけっ⁉︎」
「ーーとはいえ……ーー諸々の事情を考慮し、今回は口頭注意に留めます。 ですが、今後はこのようなことがないように!」
「はいっ!」
リアーヌの返事に大きく鼻を鳴らした教師は、その後ろに控える生徒たちを見回し大きく深呼吸したのち、声をかけた。
「――皆様もよろしいですね?」
「ーーはい先生」
ーーさすがのお嬢様がた、その返事や立ち振る舞いに文句のつけようも無かった。
……その靴の所々、そして制服のあちこちには泥が跳ねているようだったがーー
教師からの注意を聞き終わり廊下に出ると、各家のお付きたちが各々のお嬢様を出迎え、そして思いおもいに労いの言葉をかけた。
それはオリバーも例外ではなく困ったように笑いながらリアーヌに話しかける。
「ずいぶんな大冒険をされたご様子ですね?」
「えへへ……?」
(……ーーまぁ、イヤイヤ付いていった割には、ノリノリで楽しんだ自覚はありますよねー……)
そして、そんなふうに考えている者たちは意外に大井のようで、そこかしこからじぶんのぶゆつ自分の武勇伝をお付きにきかせているお嬢様がたの姿があった。
0
お気に入りに追加
344
あなたにおすすめの小説
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。
もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる