成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 土いじりなど、したことも見たことすらないお嬢様がた。
 バラに寄ってきた蜂や蝶、かたつむりなど、様々な生き物のひとつひとつに悲鳴をあげ、しかしそれでも近くで見たい! と友人同士手を取り合い、体を寄せ合いながらジリジリと近づいていく。

(どうして……結局、悲鳴を上げて離れるんだから、元から近付かなきゃいいのに……)

 心の中でグチるリアーヌだったが、バラ園での滞在時間が伸びた理由の一つにはリアーヌの存在も大きく関係していたーー

 リアーヌはちょっとしたそのイタズラごころから、興味深そうにバラの葉っぱにいたカタツムリを、繁々と眺めているビアンカに向かい「カタツムリは焼いて食べたら美味しいんだよ」と、ウソをその耳元で囁きかけたのだ。
 リアーヌとしては、その言葉を聞いたビアンカが、顔をしかめるなり、目を丸くするなり、なんらかのリアクションが返ってくれば、そこで笑いながらネタバラシするつもりだったのだが……
 ーーなんとその言葉を聞いたビアンカは、大いに興味を示してしまい「後学の為……」と呟くと、そのカタツムリに手を伸ばしてしまったのだ。
 これに目を丸くしたのはリアーヌのほうで、必死にビアンカを止めているメイドとともに「流石に生は無理かもよ⁉︎」などというトンチンカンな対応をして「加熱処理……」とビアンカが呟いだところでオリバーが「生の魚を食べたがるうちのお嬢様ですが、いくらなんでも虫やカタツムリは食べませんよ……」とネタバラシしたところ、リアーヌはビアンカ、そしてそのメイドにも思い切り睨みつけられたのだったーー

(……ちょっとからかっただけじゃん……ーーしかもその後は、みんな嬉々としてその虫はどうやって食べるんですの? とか聞いてきたから「あ、それは素揚げにして、そっちのはスープですね!」とか面白おかしく場を盛り上げていた自覚がありますよ? ……ーーあれ? だからこんなに長引いてしまった……? けどさぁ……私は提案しただけで、実際行く! って言い張ったのはレジアンナ。 しかも大義名分としては最近塞ぎ込みがちなクラリーチェ様を楽しませたかったっていう、思い切り後付の理由があるわけでして……)

「ーー聞いているのですか、リアーヌ様!」
「はいっ申し訳ございませんっ!」

(……ーーどうして私がこの件の首謀者のような扱いで、お叱りを受けなければいけないのかと……)

 リアーヌは背筋を伸ばし、少々乱れながらも及第点をもらえる程度のお辞儀を披露しながらキュッと唇を引き結ぶ。
 ーー顔をしかめてはいけない……程度の作法ならばもはや完璧にこなせるようになっているようだった。
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