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「バラ園かー校内デートにはもってこい……かな?」
「で、デート……」

 ゼクスの言葉にほほを染めるリアーヌ。
 そんなリアーヌにゼクスは楽しそうに肩を揺らした。

「ーー本当に行っていいんですよね……?」

 ゼクスの反応にブスくれたリアーヌは、プイッと顔を背けた。
 そしてその視界にオリバーを入れると、念を押すようにたずねる。
 ーーその瞳は「ヴァルムさんにチクッたりしませんよね……?」と雄弁に訴えていた。

「本日だけはかまいません」

 しっかりと頷き返したオリバーの姿に、リアーヌはようやく安堵の息を漏らすのだった。

「ーーじゃあ……行ってみる?」
「ーーはい!」

 満面の笑顔で頷くリアーヌにゼクスも嬉しそうに頷き返し、二人はカフェテラスへと向かうのだったーー



「なに食べようかー?」

 サロン棟の廊下をのんびりと歩きながらゼクスはリアーヌに話しかける。

「ーーこんなことならお昼を少なめにしておくんでした……」

 割と本気で後悔しているリアーヌに、ゼクスはクスリと笑うと揶揄うように答える。

「そんなことしたら授業中にお腹鳴っちゃうよ?」
「ぅ……」

 声を詰まらせたリアーヌにゼクスはさらに上機嫌に言葉を重ねる。

「リアーヌはいつも元気でいいよね。 見ててこっちも元気になる」

(お貴族様がご令嬢の腹の音いじってくるのってどうなんですか⁉︎ ものすごく紳士じゃないと思いますけどっ!)

「ーー俺元気な子がタイプだな?」

 ヒソっと耳元近くで囁かれた言葉に、リアーヌは大きく肩を振るわせて動揺する。
 バッと耳を抑えゼクスを睨むと、ニンマリと蠱惑的な笑みを浮かべた婚約者と目が合った。

「っ……ーーだ、騙されませんしっ‼︎」
「いやそこは騙されようよ……俺たち婚約中ですよ?」
「そ、それはそうなんですけれども……」

 モゴモゴと答えるリアーヌを見つめ、ゼクスは楽しそうにクスクスと笑いながら廊下を進んでいった。



 初めて授業をサボってやってきたカフェテラス。
 リアーヌは到着した段階でほほを紅潮
させて、瞳を輝かせていた。

(ーー私たち以外にも生徒がいる……? まさかこの人たちも授業を……⁉︎)

 などと考えながらきょときょとと視線を巡らせ、その手を引くゼクスはそんなリアーヌにによによと唇を歪ませていた。

 多少は生徒たちがいたカフェテラスだったが、幸いなことにバラが鑑賞できる席近くには誰も座っておらず、リアーヌはそれを「特等席ですね!」と称しながら、上機嫌でバラを堪能し、デザートに舌鼓を打つ。

(……そりゃ目立つ席だからねぇ……ーー心にやましいところがある人間は普通こんな席選ばないよ……)

 ゼクスはそんなことを考えながらも、美味しそうにケーキを頬張るリアーヌの姿に心癒されていた――
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