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「バラ園かー校内デートにはもってこい……かな?」
「で、デート……」
ゼクスの言葉にほほを染めるリアーヌ。
そんなリアーヌにゼクスは楽しそうに肩を揺らした。
「ーー本当に行っていいんですよね……?」
ゼクスの反応にブスくれたリアーヌは、プイッと顔を背けた。
そしてその視界にオリバーを入れると、念を押すようにたずねる。
ーーその瞳は「ヴァルムさんにチクッたりしませんよね……?」と雄弁に訴えていた。
「本日だけはかまいません」
しっかりと頷き返したオリバーの姿に、リアーヌはようやく安堵の息を漏らすのだった。
「ーーじゃあ……行ってみる?」
「ーーはい!」
満面の笑顔で頷くリアーヌにゼクスも嬉しそうに頷き返し、二人はカフェテラスへと向かうのだったーー
「なに食べようかー?」
サロン棟の廊下をのんびりと歩きながらゼクスはリアーヌに話しかける。
「ーーこんなことならお昼を少なめにしておくんでした……」
割と本気で後悔しているリアーヌに、ゼクスはクスリと笑うと揶揄うように答える。
「そんなことしたら授業中にお腹鳴っちゃうよ?」
「ぅ……」
声を詰まらせたリアーヌにゼクスはさらに上機嫌に言葉を重ねる。
「リアーヌはいつも元気でいいよね。 見ててこっちも元気になる」
(お貴族様がご令嬢の腹の音いじってくるのってどうなんですか⁉︎ ものすごく紳士じゃないと思いますけどっ!)
「ーー俺元気な子がタイプだな?」
ヒソっと耳元近くで囁かれた言葉に、リアーヌは大きく肩を振るわせて動揺する。
バッと耳を抑えゼクスを睨むと、ニンマリと蠱惑的な笑みを浮かべた婚約者と目が合った。
「っ……ーーだ、騙されませんしっ‼︎」
「いやそこは騙されようよ……俺たち婚約中ですよ?」
「そ、それはそうなんですけれども……」
モゴモゴと答えるリアーヌを見つめ、ゼクスは楽しそうにクスクスと笑いながら廊下を進んでいった。
◇
初めて授業をサボってやってきたカフェテラス。
リアーヌは到着した段階でほほを紅潮
させて、瞳を輝かせていた。
(ーー私たち以外にも生徒がいる……? まさかこの人たちも授業を……⁉︎)
などと考えながらきょときょとと視線を巡らせ、その手を引くゼクスはそんなリアーヌにによによと唇を歪ませていた。
多少は生徒たちがいたカフェテラスだったが、幸いなことにバラが鑑賞できる席近くには誰も座っておらず、リアーヌはそれを「特等席ですね!」と称しながら、上機嫌でバラを堪能し、デザートに舌鼓を打つ。
(……そりゃ特別目立つ席だからねぇ……ーー心にやましいところがある人間は普通こんな席選ばないよ……)
ゼクスはそんなことを考えながらも、美味しそうにケーキを頬張るリアーヌの姿に心癒されていた――
「で、デート……」
ゼクスの言葉にほほを染めるリアーヌ。
そんなリアーヌにゼクスは楽しそうに肩を揺らした。
「ーー本当に行っていいんですよね……?」
ゼクスの反応にブスくれたリアーヌは、プイッと顔を背けた。
そしてその視界にオリバーを入れると、念を押すようにたずねる。
ーーその瞳は「ヴァルムさんにチクッたりしませんよね……?」と雄弁に訴えていた。
「本日だけはかまいません」
しっかりと頷き返したオリバーの姿に、リアーヌはようやく安堵の息を漏らすのだった。
「ーーじゃあ……行ってみる?」
「ーーはい!」
満面の笑顔で頷くリアーヌにゼクスも嬉しそうに頷き返し、二人はカフェテラスへと向かうのだったーー
「なに食べようかー?」
サロン棟の廊下をのんびりと歩きながらゼクスはリアーヌに話しかける。
「ーーこんなことならお昼を少なめにしておくんでした……」
割と本気で後悔しているリアーヌに、ゼクスはクスリと笑うと揶揄うように答える。
「そんなことしたら授業中にお腹鳴っちゃうよ?」
「ぅ……」
声を詰まらせたリアーヌにゼクスはさらに上機嫌に言葉を重ねる。
「リアーヌはいつも元気でいいよね。 見ててこっちも元気になる」
(お貴族様がご令嬢の腹の音いじってくるのってどうなんですか⁉︎ ものすごく紳士じゃないと思いますけどっ!)
「ーー俺元気な子がタイプだな?」
ヒソっと耳元近くで囁かれた言葉に、リアーヌは大きく肩を振るわせて動揺する。
バッと耳を抑えゼクスを睨むと、ニンマリと蠱惑的な笑みを浮かべた婚約者と目が合った。
「っ……ーーだ、騙されませんしっ‼︎」
「いやそこは騙されようよ……俺たち婚約中ですよ?」
「そ、それはそうなんですけれども……」
モゴモゴと答えるリアーヌを見つめ、ゼクスは楽しそうにクスクスと笑いながら廊下を進んでいった。
◇
初めて授業をサボってやってきたカフェテラス。
リアーヌは到着した段階でほほを紅潮
させて、瞳を輝かせていた。
(ーー私たち以外にも生徒がいる……? まさかこの人たちも授業を……⁉︎)
などと考えながらきょときょとと視線を巡らせ、その手を引くゼクスはそんなリアーヌにによによと唇を歪ませていた。
多少は生徒たちがいたカフェテラスだったが、幸いなことにバラが鑑賞できる席近くには誰も座っておらず、リアーヌはそれを「特等席ですね!」と称しながら、上機嫌でバラを堪能し、デザートに舌鼓を打つ。
(……そりゃ特別目立つ席だからねぇ……ーー心にやましいところがある人間は普通こんな席選ばないよ……)
ゼクスはそんなことを考えながらも、美味しそうにケーキを頬張るリアーヌの姿に心癒されていた――
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