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「えっと……?」
「いいから」
(いいことなんてどこにも無いように思われますが……?)
戸惑うリアーヌだったが、手を引かれながら腰をつかまれ、そのままズンズンと歩くゼクスのスピードについていけず、歩き始めて少し経った時点で、もはや抱えられるように持たれ、授業の予鈴が鳴り響く廊下をずんずんと進んで行くのだったーー
(……当然だけど、ことごとく注目を集めておりますが……?)
微妙そうな顔を浮かべ周りの反応を気にしていたリアーヌだったが、次の瞬間ユリアの言動を思い出し、湧き上がってきた嫌な予感に人知れずこっそりと顔をしかめた。
(……あの露骨な態度はさぁ……ーー間違いない気がする。 ーーいや、言ってることは主人公っぽかったけど……それでも“違う”気がする……ーー多分……いや、ほぼ間違いなくーーあのユリアは転生者だ)
「ここって……?」
ずんずんと歩くゼクスがリアーヌを連れてきたのは、サロン棟の隅のほうの小さな荷物置き場のような小部屋だった。
少しの荷物と木箱がいくつか積み重なっていて、三人がけのソファーが一つに木製の簡素な椅子が二つ。
そして小さなテーブルが一つあるだけのずいぶんと質素な造りの部屋だった――
「うちのサロン」
「サロンなんてあったんですね?」
ドサリと音を立てて乱暴にソファーに腰掛けるゼクスにドギマギしながら、リアーヌも残った椅子の一つに戸惑いながら腰を下ろした。
――それと同時にサロンの扉が開き、息を切らせたオリバーがサロン内に押し入るように入り込んだ。
「失礼いたします。 お嬢様ご無事でなによりでございます」
「あれ、オリバーさん?」
(今日はザームがちょっと危険な訓練するから、なにかあった時のために見守ってくれてたはずなのに……)
「……困りますよ、ゼクス様」
オリバーは軽くリアーヌに頭を下げると、ハッキリと眉を寄せてゼクスを非難する。
「ーー苦情は向こうさんにいってもらえます?」
オリバーの言葉にゼクスはソファーがギシリッと音を立てるほど力任せに、背もたれに身体を倒れ込ませる。
(よく分かんないけど、ゼクスがすっごいイラついてるってのだけは把握)
「えっと……びっくりしちゃいましたよねー?」
この場を少しでも和ませようと、明るい声で話すリアーヌ。
そんなリアーヌにゼクスは大きく息を吐き出すと頭を抱えるように手で顔を覆った。
「――……ごめん。 リアーヌに八つ当たりしたって仕方ないのに……」
「……私八つ当たりされたんです?」
「……巻き込みはしちゃったじゃん?」
「あー……でも、あそこで一人残されてゼクス様見送るより、一緒にここのほうが私は良かった気がします……?」
「いいから」
(いいことなんてどこにも無いように思われますが……?)
戸惑うリアーヌだったが、手を引かれながら腰をつかまれ、そのままズンズンと歩くゼクスのスピードについていけず、歩き始めて少し経った時点で、もはや抱えられるように持たれ、授業の予鈴が鳴り響く廊下をずんずんと進んで行くのだったーー
(……当然だけど、ことごとく注目を集めておりますが……?)
微妙そうな顔を浮かべ周りの反応を気にしていたリアーヌだったが、次の瞬間ユリアの言動を思い出し、湧き上がってきた嫌な予感に人知れずこっそりと顔をしかめた。
(……あの露骨な態度はさぁ……ーー間違いない気がする。 ーーいや、言ってることは主人公っぽかったけど……それでも“違う”気がする……ーー多分……いや、ほぼ間違いなくーーあのユリアは転生者だ)
「ここって……?」
ずんずんと歩くゼクスがリアーヌを連れてきたのは、サロン棟の隅のほうの小さな荷物置き場のような小部屋だった。
少しの荷物と木箱がいくつか積み重なっていて、三人がけのソファーが一つに木製の簡素な椅子が二つ。
そして小さなテーブルが一つあるだけのずいぶんと質素な造りの部屋だった――
「うちのサロン」
「サロンなんてあったんですね?」
ドサリと音を立てて乱暴にソファーに腰掛けるゼクスにドギマギしながら、リアーヌも残った椅子の一つに戸惑いながら腰を下ろした。
――それと同時にサロンの扉が開き、息を切らせたオリバーがサロン内に押し入るように入り込んだ。
「失礼いたします。 お嬢様ご無事でなによりでございます」
「あれ、オリバーさん?」
(今日はザームがちょっと危険な訓練するから、なにかあった時のために見守ってくれてたはずなのに……)
「……困りますよ、ゼクス様」
オリバーは軽くリアーヌに頭を下げると、ハッキリと眉を寄せてゼクスを非難する。
「ーー苦情は向こうさんにいってもらえます?」
オリバーの言葉にゼクスはソファーがギシリッと音を立てるほど力任せに、背もたれに身体を倒れ込ませる。
(よく分かんないけど、ゼクスがすっごいイラついてるってのだけは把握)
「えっと……びっくりしちゃいましたよねー?」
この場を少しでも和ませようと、明るい声で話すリアーヌ。
そんなリアーヌにゼクスは大きく息を吐き出すと頭を抱えるように手で顔を覆った。
「――……ごめん。 リアーヌに八つ当たりしたって仕方ないのに……」
「……私八つ当たりされたんです?」
「……巻き込みはしちゃったじゃん?」
「あー……でも、あそこで一人残されてゼクス様見送るより、一緒にここのほうが私は良かった気がします……?」
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