594 / 1,038
594
しおりを挟む
「…………」
「…………」
ゼクスの手を借りて席から立ち上がったリアーヌをビアンカが無言でジッと見つめる。
その視線を受け戸惑うリアーヌだったが、すぐに先ほどの会話を思い出しシャキンッ! と背筋を伸ばした。
「分かればいいのよ」
「うっす!」
「野蛮な返事はやめて」
「……はい」
そんな二人のやり取りにクスクスという笑い声が漏れ、ゼクスもにこやかに笑いながらリアーヌの背中に手を回した。
「ーー断ってね」
手を引かれながら耳元で囁かれた言葉に動揺しながらも小さく頷き返すリアーヌ。
(……よく分かんないけど私のミッションは、なにかを断ることっぽい!)
「お待たせしましたね。 ユリア譲」
「全然気にしてないよ!」
ニコリと笑って答えるユリアにピクリと反応を見せるゼクス。
触れ合っているリアーヌにはその反応がよく伝わってきた。
自分のほうは貴族のご令嬢だからと礼を尽くしているのに、向こうからは平民同士でやりとりをするような言葉、それも敬う気持ちのかけらもないような対応をされ、機嫌を損ねているようだった。
「……こちらは私の婚約者、リアーヌ・ボスハウト様でございます。 リアーヌこちらは……」
と、ゼクスがユリアよ紹介を始めようと手で差した瞬間、ユリアがズイッと一歩前に踏み出てリアーヌたちを見据えたまま、よく通る明るい声で言い放った。
「ユリア・フォレステルと申します!」
直後に背後から感じた騒めきは、素知らぬ態度でこのやり取りに耳を澄ませていたクラスメイトたちのものなのだろう。
(……あれ? これ厳密には私紹介されていないような……? いやでもここでぐじぐじ言うのもなんか性格悪いとか思われそうーーよし! すっ飛ばそう!)
貴族階級の者たちには“知らない相手に話しかけてはいけない”という絶対的な常識が存在した。
もちろんこれは建前であり、もっと人目の少ない場所や仮面舞踏会などでは無いにも等しい常識だったが、こんな場所で間に入ったゼクスがいたにも関わらず自分で名乗りをあげてしまったユリアに、リアーヌは一般的な対応をすぐさま諦めた。
(えーと……相手が先に名乗っちゃって、でもこっちは精一杯の礼を尽くしたんですよアピールがしたい時は……ーーまず首を少し傾けて、口角を引き上げるーー歯は見せない! そして軽く膝を折ってちょっとだけ頭を下げてからのキープッ!)
「わざわざご丁寧に恐れ入ります。 リアーヌ・ボスハウトでございます」
(1、2、3! 膝伸ばして胸も張る、頭も戻して……口角は上げるっ‼︎ ーーどう⁉︎ 我ながら完璧な対処だったと思うけど⁉︎)
「…………」
ゼクスの手を借りて席から立ち上がったリアーヌをビアンカが無言でジッと見つめる。
その視線を受け戸惑うリアーヌだったが、すぐに先ほどの会話を思い出しシャキンッ! と背筋を伸ばした。
「分かればいいのよ」
「うっす!」
「野蛮な返事はやめて」
「……はい」
そんな二人のやり取りにクスクスという笑い声が漏れ、ゼクスもにこやかに笑いながらリアーヌの背中に手を回した。
「ーー断ってね」
手を引かれながら耳元で囁かれた言葉に動揺しながらも小さく頷き返すリアーヌ。
(……よく分かんないけど私のミッションは、なにかを断ることっぽい!)
「お待たせしましたね。 ユリア譲」
「全然気にしてないよ!」
ニコリと笑って答えるユリアにピクリと反応を見せるゼクス。
触れ合っているリアーヌにはその反応がよく伝わってきた。
自分のほうは貴族のご令嬢だからと礼を尽くしているのに、向こうからは平民同士でやりとりをするような言葉、それも敬う気持ちのかけらもないような対応をされ、機嫌を損ねているようだった。
「……こちらは私の婚約者、リアーヌ・ボスハウト様でございます。 リアーヌこちらは……」
と、ゼクスがユリアよ紹介を始めようと手で差した瞬間、ユリアがズイッと一歩前に踏み出てリアーヌたちを見据えたまま、よく通る明るい声で言い放った。
「ユリア・フォレステルと申します!」
直後に背後から感じた騒めきは、素知らぬ態度でこのやり取りに耳を澄ませていたクラスメイトたちのものなのだろう。
(……あれ? これ厳密には私紹介されていないような……? いやでもここでぐじぐじ言うのもなんか性格悪いとか思われそうーーよし! すっ飛ばそう!)
貴族階級の者たちには“知らない相手に話しかけてはいけない”という絶対的な常識が存在した。
もちろんこれは建前であり、もっと人目の少ない場所や仮面舞踏会などでは無いにも等しい常識だったが、こんな場所で間に入ったゼクスがいたにも関わらず自分で名乗りをあげてしまったユリアに、リアーヌは一般的な対応をすぐさま諦めた。
(えーと……相手が先に名乗っちゃって、でもこっちは精一杯の礼を尽くしたんですよアピールがしたい時は……ーーまず首を少し傾けて、口角を引き上げるーー歯は見せない! そして軽く膝を折ってちょっとだけ頭を下げてからのキープッ!)
「わざわざご丁寧に恐れ入ります。 リアーヌ・ボスハウトでございます」
(1、2、3! 膝伸ばして胸も張る、頭も戻して……口角は上げるっ‼︎ ーーどう⁉︎ 我ながら完璧な対処だったと思うけど⁉︎)
0
お気に入りに追加
343
あなたにおすすめの小説
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
断罪イベント? よろしい、受けて立ちましょう!
寿司
恋愛
イリア=クリミアはある日突然前世の記憶を取り戻す。前世の自分は入江百合香(いりえ ゆりか)という日本人で、ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢で、そしてイリア=クリミアは1/1に起きる断罪イベントで死んでしまうということを!
記憶を取り戻すのが遅かったイリアに残された時間は2週間もない。
そんなイリアが生き残るための唯一の手段は、婚約者エドワードと、妹エミリアの浮気の証拠を掴み、逆断罪イベントを起こすこと!?
ひょんなことから出会い、自分を手助けしてくれる謎の美青年ロキに振り回されたりドキドキさせられながらも死の運命を回避するため奔走する!
◆◆
第12回恋愛小説大賞にエントリーしてます。よろしくお願い致します。
◆◆
本編はざまぁ:恋愛=7:3ぐらいになっています。
エンディング後は恋愛要素を増し増しにした物語を更新していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる