成り上がり令嬢暴走日記！

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「まいったなぁ……」

　そう言って困ったように首を揉むように撫で付けるゼクスだったが、あることに気が付いたかのように急に顔を明るくした」

「そうだ！　リアーヌの力って、ラッフィナート商会に優先権があるんだった」
「優先権……？」

　ゼクスの言葉に男子生徒は訝しげな表情を浮かべる。

「そう。　ーーもちろんそんなギフトなんて持ってないよ？　でも仮に持ってたとしても、婚約の条件にギフトの優先権はラッフィナート商会にあるって取り決めちゃってるんだよー……だからごめんね？」
「……ーーつまり、ギフトを使う時はラッフィナート商会の許しが必要になる……？」
「……あくまでも優先権だからそこまで強くはいえないけど……ーーせめて事前に連絡ぐらい欲しいかなー？　って思っちゃうかも⁇　ーーこっちとしても家の名前が入った契約だからさ……？」

　それまでのにこやかな雰囲気から一変し、圧をかけるように微笑むゼクス。
　そんなゼクスにたじろぎ、ジリリッと後ずさる男子生徒。

「ーーま、重ねて言うけど、そんな力無いんだけどねー？」

　また芝居がかった調子で、戯けたように言うゼクス。
　男子生徒は戸惑った様子で、チラリと同行していた女生徒に視線を送った。
　その女子生徒は廊下の端にひっそりと佇み、ジッとゼクスたちのやり取りを見つめていた。
　そして男子生徒と目が合うと、かすかに首を横に振る。
　その動きを見て、男子生徒はがっかりしたように大きく肩を落とす。

「じゃあやっぱり勘違いなんですね……」

　男子生徒はしょんぼりとそう言うと「お騒がせしました……」と言いながらゼクスたちに背中を向けた。
　ーーそんな男子生徒の背中に今度はゼクスが疑問を投げかけた。

「あ、待って？　ーーその勘違いって誰かと話しててしちゃった？」
「……え？」

　振り返った男子生徒にゼクスは肩をすくめながら質問を重ねる。

「君の言い方がまるで、誰かから話を聞いて勘違いしたみたいに聞こえたから……ーーそれって誰？」

　ニコリと笑ったゼクスに対し、男子生徒はあからさまに動揺し、視線を揺らしはじめた。

「い、いや……ーー俺が、俺が勝手に勘違いしちゃっただけで！　本当すみませんでした！」
「あ、ちょっと……」

　ゼクスの制止の言葉も聞かず、男子生徒はバタバタと廊下を走り去っていく。
　残された女子生徒にチラリと視線を向けると、残された女子生徒も気まずそうな顔つきでペコリと頭を下げ、そそくさと離れていった。

「ーー随分と噂が出回ってるねぇ……」

　ポソリと聞こえてきたゼクスの言葉に、リアーヌは嫌な予感をヒシヒシと感じていた――